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「農家は簡単には息絶えん」ネギ栽培いつかまた 呉市倉橋の親子、西日本豪雨2年半
呉市倉橋町の農業立花忠良さん(64)、長男の隼人さん(39)の営むネギ農園は、2018年7月の西日本豪雨で大規模な土砂崩れに遭った。栽培中のネギや倉庫がのみ込まれたあの日から2年半が過ぎた。土砂撤去がようやく終わった農地と新築した倉庫の前で、2人は再びネギを育てられる日を願う。
「もう2年はかかるじゃろうね」。忠良さんは、今も更地のままの「畑」を見てつぶやいた。南向きで日当たりのいい約20アールの土地。豪雨前はビニールハウスや2階建て倉庫3棟が建ち、青々としたネギがすくすくと育っていた。
豪雨では畑までの道が崩れ、海から船でたどり着いたのは発生2日後の7月8日。当初は被害がなく安心していたが、他の畑を見ていた時に「わさわさわさと大きな音が聞こえた」。慌てて畑に戻ると、目に入ったのは幅40メートル、奥行き100メートルにわたり、高さ3メートルまで積もった土砂の山だ。
被害額はネギだけで約200万円。先代から少しずつ整えた倉庫やハウスを同規模で造り直すと、数千万円かかるとも言われた。
「無事だった所もあって良かった」。死の隣にいた恐怖からか、忠良さんは妙に冷静だった。それからは土砂に埋もれたままの畑を横目に、被害のなかった農地でトマトなどの栽培を続けた。ネギは同規模の土地を借りて作った。倉庫は隣の土地に新設。農機具類は再購入した。
市による土砂撤去がようやく始まったのは昨年7月。11月中旬、更地になった。崩れた崖は補強された。ただ、ネギを再び育てるには、土地のかさ上げや再耕が欠かせない。遅々とした復旧に「豪雨がもう昔話のよう」に感じるが、これからの道のりも長い。
3代目の隼人さんは「50年に1度といわれる災害なら、次の代で同じことが起きるかもしれない。怖さはあります」と語る。忠良さんは深くうなずき、「できることをやる。そしていつかまたここでネギを育てる。農家は簡単には息絶えん」。分厚い手を握り締め、前を見据えた。(池本泰尚)
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