• トップ >
  • トピックス >
  • 瀬戸内海の一部で水温30度超 環境省、温暖化対策なしで今世紀末を予測 カキ・ノリ養殖に影響か

トピックス

瀬戸内海の一部で水温30度超 環境省、温暖化対策なしで今世紀末を予測 カキ・ノリ養殖に影響か

2021/1/11 22:04

 国際社会が連携して抜本的な地球温暖化対策を講じなかった場合、21世紀末には瀬戸内海の平均水温が今より3〜4度上昇し、8月には広島湾や備後灘、周防灘などで30度を超えるとの予測を環境省がまとめた。同省は「カキやノリの養殖などに影響を及ぼす可能性がある」としている。

 予測は湾、灘の計11カ所を対象にした2081年9月〜2100年8月の海面近くの水温の推移。同年には月ごとの平均水温が3・24〜4・18度上がる。

 水温が最も高くなる8月時点で、岡山、香川県にまたがる備讃瀬戸は33・02度に達する。30度超えは、備後灘32・64度▽播磨灘31・83度▽燧(ひうち)灘31・59度▽周防灘31・14度▽広島湾30・91度―の計6カ所に及ぶ。同省閉鎖性海域対策室は「瀬戸内海中央部や湾内は流れが滞留しがちで、外洋の海水が出入りする豊後水道や紀伊水道より温まりやすい」という。

 予測は国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が示した「各国が地球温暖化対策を行わない場合、21世紀末に世界の平均気温が2・6〜4・8度上がる」との想定に基づく。同省が保管する1985〜2004年の水温データを元に瀬戸内海の20世紀末モデルをつくり、スーパーコンピューターで推計した。

 水温上昇で魚介類が餌とする植物プランクトンが冬場に増加し、夏から秋にかけ減少する傾向を示した。これに伴ってノリや海藻が育つのに必要で、植物プランクトンが餌にするリンや窒素など栄養塩類の濃度も変動し、生態系や養殖漁業を支える土台が変わってしまうことが懸念される。

 専門家でつくる同省の瀬戸内海環境保全小委員会の委員には、気温の設定で結果は異なるため長期的な影響に関して慎重な議論を求める声もある。同対策室は「生態系に及ぼす影響や適応策を引き続き調査、分析する」としている。

 広島湾や福山市沖で養殖ノリやカキ、カタクチイワシの成育状況を調べている広島大大学院の小池一彦教授(水産学)は「漁業の現場で気候変動の影響は既に出ている。さらに水温が上がれば影響は拡大する恐れがある」と指摘する。

 近年、各地で起きているノリの色落ちやカキの採苗不良の背景には水温上昇とともに、降雪量の減少や秋雨前線の活発化などによる河川流量の変化があると分析。海域ごとに栄養塩類を管理する必要性に言及し、「国や関係機関は合意形成を急ぎ、生き物にとって必要な時期に海へ栄養を届ける仕組みづくりに乗り出すべきだ」と話す。(桑原正敏)

 <クリック>気候変動に関する政府間パネル(IPCC) 国連環境計画と世界気象機関がつくった国際組織。地球温暖化に関する最新の研究成果を各国の政策決定者に示すのが主な役割で、数年おきに温暖化の予測、影響、対策をまとめた評価報告書を公表し、温室効果ガスの排出量を算定するガイドラインも作る。2013年公表の第5次評価報告書は20世紀末からの気温上昇を温暖化対策のレベルに応じて予測し、なし=2・6〜4・8度▽少=1・4〜3・1度▽中=1・1〜2・6度▽最大=0・3〜1・7度―の四つのシナリオを示した。


  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

トピックスの最新記事
一覧