広島80万人PCR検査、なぜ今 評価の一方、医療現場に不安の声も
広島県が打ち出した広島市民の最大80万人を対象にした集中的なPCR検査。なぜこのタイミングで踏み切るのか。どんな効果が見込まれるのか。無症状の人から新型コロナウイルスの感染が広がるのを防ごうとする県の狙いを評価する声がある一方、医療現場では陽性者のフォロー体制への不安など懸念も広がる。
▽現場負担増、効果に疑問
広島市の直近1週間の人口10万人当たり新規感染者数は、12月26日に44・2人のピークに達し、全国でも高い状態が1月も続く。県の担当者は「感染が高止まりしている状態から脱却し、感染爆発を回避したい」と大規模検査を導入する理由を説明する。
押さえ込みたいのは、無症状の人からの感染だ。新型コロナウイルス感染症は、発熱やせきなどの症状が出る数日前から感染力を持つ。広島県感染症・疾病管理センターの桑原正雄センター長は「感染経路が不明の人も多く、無症状の人を早期に見つけ出せば、押さえ込みに一定の効果があるはずだ」と評価する。
広島大病院感染症科の大毛宏喜教授は、中国や韓国で積極的な検査が奏功した例を挙げ「一歩踏み込んだ対策」と理解を示す。陽性者に宿泊療養をしてもらえば急変にも対応しやすく、死亡率を下げられる可能性もあるという。
▽国に支援要求へ
県は地区ごとに期間を決めて計約80万人に上る対象者に検査を呼び掛ける見通し。市内2カ所にあるPCR検査センターの拡充や、複数の検体を同時検査する「プール方式」なども検討しているが、検査の詳細は固まっていない。財源確保のめども立っていない。県の担当者は「県の予算だけでは無理」と明かし、国に支援を求める考えを示した。
▽外出増への懸念
実現可能性や現場の負担増を懸念する意見もある。広島市内の勤務医は集中検査を評価する一方、「検査数の許容範囲を超え、症状のある人の検査に遅れが出ないか」と心配する。市内の関係者からは「陽性者の聞き取りや書類作成、日々の健康観察など、仕事量は膨大。今でさえしんどいのに…」との声も漏れる。
効果そのものに懐疑的な意見もある。広島市の診療所の院長は「いったん感染を抑えても、また広がる。膨大な費用がかかるわりに効果は薄い」と指摘。国際医療福祉大の和田耕治教授(公衆衛生学)も「症状のある人に検査するのが基本」と強調。陰性とされた人が安心して外出し、人と人との接触機会が増えることに懸念を示した。(衣川圭、田中美千子)
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