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【詳報・案里被告判決公判】<1>懲役1年4月、執行猶予5年

2021/1/22 1:01

 2019年7月の参院選広島選挙区の大規模買収事件で公選法違反罪に問われた河井案里被告(47)=参院広島=の判決公判で21日、東京地裁の高橋康明裁判長は広島県議4人への買収罪の成立を認定し、懲役1年4月、執行猶予5年を言い渡した。一方、江田島市議への現金提供は夫の克行被告(57)=衆院広島3区=との共謀を認めず、無罪とした。判決の詳報は次の通り。(敬称・呼称略)

 【主文】

 被告人を懲役1年4月に処する。

 

 この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。

 本件公訴事実中、第1の別表1番号5の(江田島市議の)胡子雅信に対する買収および事前運動の点については、被告人は無罪。

 【理由】

 ■罪となるべき事実

 被告人は、令和元年7月4日公示・同月21日施行の第25回参議院議員通常選挙(以下「本件選挙」という)に際し、広島県選挙区から立候補する決意を有していたもの、分離前の相被告人である河井克行は、被告人の夫であるが、被告人は、河井克行と共謀の上、被告人に当選を得しめる目的をもって、いまだ立候補の届出前である

 第1 平成31年3月30日、広島県府中市府川町にある岡崎哲夫選挙事務所において、選挙人かつ選挙運動者である岡崎哲夫県議に対し、被告人への投票および投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬として、現金30万円を供与するとともに、それにより立候補届出前の選挙運動をし

 

 第2 平成31年4月5日、広島県安芸郡海田町にある國信自治会館において、平本徹県議の妻に対し、平本徹に渡すように言って現金30万円を渡し、平本徹の妻を介して、広島県安芸郡熊野町にある平本徹方において、選挙人かつ選挙運動者である平本徹に対し、被告人への投票および投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬として、現金30万円を供与するとともに、それにより立候補届出前の選挙運動をし、

 

 第3 平成31年4月7日、広島県東広島市黒瀬町にある下原康充選挙事務所において、選挙人かつ選挙運動者である下原康充県議に対し、被告人への投票および投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬として、現金50万円を供与するとともに、それにより立候補届出前の選挙運動をし、

 第4 令和元年5月25日、広島県呉市にある奥原のぶや後援会事務所において、選挙人かつ選挙運動者である奥原信也県議に対し、被告人への投票および投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬として、現金50万円を供与するとともに、それにより立候補届出前の選挙運動をした。

 ■事実認定の補足説明および一部無罪の理由

 第1 当裁判所の判断

 1 岡崎哲夫、平本徹、下原康充および奥原信也に対する買収および事前運動について

(1)弁護人および被告人は、被告人が岡崎に現金30万円を渡したことは認めるが、それは当選祝いという趣旨である、被告人が平本にその妻を介して現金30万円を渡したことは認めるが、それは選挙の陣中見舞いという趣旨である、被告人が下原に現金50万円を渡した記憶はなく、仮に渡したとしても、それは選挙の陣中見舞いという趣旨である、被告人が奥原に現金50万円を渡したことは認めるが、それは令和元年5月25日ではなく平成31年4月26日であり、また、当選祝いという趣旨であるとして、いずれも買収および事前運動に当たらないと主張する。また、これらについて河井克行(以下「克行」という。)と共謀したことはないと主張する。

(2)当裁判所は、岡崎、平本、下原および奥原に対する現金の交付については、本件選挙の情勢、現金授受の時期、受供与者の立場や被告人との関係、現金授受の状況、その金額等の諸事情に照らして、判示の罪となるべき事実のとおり、買収および事前運動に当たるものと認定し、これらは克行との共謀によるものと認定した。

 2 胡子雅信に対する買収および事前運動について

(1)関係各証拠によれば、克行が買収の意図でスタッフの(当時案里被告の公設秘書だった)元公設秘書を介して胡子に現金10万円を交付したという事実が認められるところ、検察官は、これについて被告人と克行との間に共謀が認められると主張する。

(2)当裁判所は、この供与に関する被告人と克行との意思の連絡の状況、被告人の認識、被告人の関わり等の諸事情を検討し、被告人と克行との間の共謀の成立を認めるに足りる事情がないと判断し、被告人を無罪とした。以下、以上のそれぞれの判断についての理由を説明する。

 第2 罪となるべき事実を認定した理由

 1 前提となる事実関係

 関係各証拠によれば、以下の事実が認められる。

 (1)被告人が本件選挙に立候補するまでの経緯等について

 

 ア被告人は、平成15年、広島県議会議員選挙に広島市安佐南区選挙区から立候補して初当選し、平成19年の同選挙においても当選したが、任期途中の平成21年、広島県知事選挙に立候補し、落選した。その後、平成23年および平成27年の広島県議会議員選挙で当選したが、平成31年3月中旬までには、本件選挙への立候補を決意したことから、同月29日告示・同年4月7日施行の広島県議会議員選挙には立候補せず、同月29日に同議会、議員の任期が満了した。

 

 イ克行は、平成3年、広島県議会議員選挙で当選し、平成5年には、自民党の公認候補として衆院議員総選挙に立候補し、落選したものの、平成8年、同選挙で当選し、その後は、一度の落選を除き、平成15年から平成29年の同選挙まで連続して当選し、本件当時は7期目を務める自民党所属の衆院議員であった。克行の選挙区は広島県第三選挙区であり、その対象行政区域は広島市安佐北区、同市安佐南区、安芸高田市、山県郡(安芸太田町および北広島町)である。克行は、平成13年4月に被告人と結婚し、本件当時は被告人の配偶者であった。

 ウ自民党における参議院議員通常選挙の候補者の公認は、自民党本部に決定権限があるが、広島県選挙区においては、通常、候補者は、広島県選出の国会議員等で構成される自民党広島県支部連合会(以下「県連」という。)の了承を得た上で自民党本部に公認申請する、という手順がとられていた。本件選挙においても、平成30年7月頃、当時現職の参議院議員であった溝手顕正が、県連の了承を得て自民党本部に公認申請し、自民党本部から公認を得ていた。

 なお、溝手は、本件当時、当選回数5回の参議院議員であり、前回の参議院議員通常選挙では約52万票を獲得して、2位で約19万票を獲得して当選した森本真治に大差をつけて当選した。
(ここまで 2615文字/記事全文 4362文字)

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