地域ニュース

【詳報・案里被告判決公判】<4>奥原県議への現金供与について

2021/1/22 1:01

 5 奥原に対する現金の供与について

 (1)奥原の証言を中心とする関係各証拠によれば、奥原の立場や被告人との関係、現金授受の状況につき、以下の事実が認められる。

 ア奥原は、広島県呉市の選挙区において、昭和50年から平成31年までの広島県議会議員選挙に当選し続け、同議会議長や県連の幹事長を務めたこともあった。被告人とは、被告人が県議会職員に初当選した平成15年頃から、同じ「自民会」に所属していたこともあり付き合いがあったが、奥原が別の会派に変わった後は会うことはなかった。

 イ奥原は、平成31年1月頃には、自民党本部が本件選挙において、被告人を公認候補とすることを知った。

 ウ被告人は、令和元年5月25日、事前に奥原へ連絡を入れた上で、同人の後援会事務所を訪れた。

 被告人および奥原は、2人で、本件選挙の状況や、被告人の後援会入会申込書を奥原宛てに送ることについて話をするなどした後、被告人は、現金50万円が入った封筒を置くと、そのまま何も言わず事務所を立ち去った。

 なお、被告人は、奥原に現金を渡したのは、令和元年5月25日ではなく、元公設秘書と一緒に前記事務所を訪れた平成31年4月26日であり、授受の際には元公設秘書が同席していたと述べる。

 しかし、奥原は、本件現金のやりとりがあった際に元公設秘書は同席していなかったと証言しており、元公設秘書も、自身が訪れた際に被告人が封筒を奥原に渡すようなやりとりはなかったと証言している。これらの証言は、特に疑わしい点はなく、整合しており、これによれば、本件現金の授受が行われたのは令和元年5月25日であったと認められる。

 (2)上記認定事実を踏まえ、被告人が奥原に現金を渡した意図について検討する。まず、被告人が置かれていた選挙情勢については、岡崎への現金供与のところで検討したとおり、被告人にとっては厳しい選挙情勢にあったことが認められる。現金交付の時期は、本件選挙の公示日まで1カ月余りの時期であった。

 奥原は、長年、広島県議会議員を務め、要職に就くなどしていた人物であり、被告人や克行の支持地盤地域外である呉市に支持地盤を持つとともに、同地域の有権者に影響を与え得る存在であった。本件選挙では溝手のほか被告人も応援する方針を取っていたのであり、被告人にとっては、本件選挙での支援を強く期待できる人物であった。実際に、奥原は、本件選挙の公示前に被告人の後援会入会申込書を関係者に配布した。

 そして、本件現金の授受の状況は、被告人が奥原に対し、2人きりの状況で、本件選挙に関する話をした後に、何らの説明もなく、現金50万円を置いていったというものであり、領収書も発行されていない。

 被告人が奥原に渡した現金の額は50万円であり、その金額は、奥原の立場や本件選挙において期待された役割に照らして、被告人への投票および投票取りまとめなどの選挙運動をすることの報酬として相応に見合うだけの額といえる。

 以上みたような(1)選挙情勢、(2)現金授受の時期、(3)奥原の立場や被告人との関係、(4)現金授受の状況、(5)金額を総合して考えれば、判示のとおり、被告人は、本件選挙において自身に当選を得しめる目的をもって、奥原に対し、奥原自身の被告人への投票および有権者に被告人への投票の働きかけを行うなどの投票取りまとめの報酬として現金50万円を供与したものと認められ、すなわち、この現金授受は選挙買収であったと認められる。

 (3)この点、弁護人は、被告人は、従前から受けていた恩義に報いるという感謝の気持ちを込めて、平成31年4月7日施行の県議会議員選挙における当選祝いとして奥原に現金を渡したにすぎないと主張する。しかしながら、その実質をみると、既に検討したとおり、被告人が奥原に渡した現金は買収目的の金員と評価せざるを得ないのであって、弁護人の主張は採り得ない。
(ここまで 1561文字/記事全文 4124文字)

会員限定の記事です
  • 無料登録して続きを読む
  • ログインする
  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

アーカイブの最新記事
一覧