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【詳報・案里被告判決公判】<5>一部無罪の理由

2021/1/22 1:01

 第3 一部無罪の理由

 

 1 公訴事実

 本件公訴事実の第1別表1番号5の要旨は、「被告人は、克行と共謀の上、被告人に本件選挙における当選を得しめる目的をもって、令和元年6月16日、江田島市所在の大柿市民センターにおいて、胡子雅信に対し、被告人への投票および投票取りまとめなどの選挙動を依頼し、その報酬として、現金10万円を供与するとともに、立候補届出前の選挙運動をした」というものである。

 2 検察官の主張等

 関係各証拠によれば、克行が元公設秘書に対して現金10万円が入った茶封筒(A4あるいはB5サイズ)を胡子に渡すよう指示し、元公設秘書が大柿市民センターでこれを胡子に渡したという事実が認められるところ、検察官は、この行為が買収に当たるということを前提として、これについて、被告人は克行との間で直接意を通じていたといえる、あるいは、元公設秘書を介して意を通じたといえるとして、被告人には共謀が認められると主張する。

 当裁判所は、本件について、被告人と克行との間の共謀は成立しないと判断したが、その理由は以下のとおりである。

 

 3 本件に至る経緯等について

 

 (1)元公設秘書および胡子の証言を中心とする関係各証拠によれば、元公設秘書が胡子に現金入りの茶封筒を渡すに至った経緯やこれを渡した際の状況について、以下の事実が認められる。

 ア胡子は、平成15年に大柿町議会議員選挙に初当選し、平成16年の合併により江田島市議会議員となり、以後、江田島市議会議員選挙に当選し続け、本件当時は5期目の市議会議員を務めていた。なお、胡子は、被告人および克行とは、これまでほぼ面識がなかった。胡子は、平成31年3月中旬頃、テレビの報道を通じ、被告人が本件選挙に立候補することを知った。ほとんどの江田島市議会議員は、現職である溝手を支持する状況であり、胡子も溝手を支援することを考えていた。

 イ克行は、令和元年6月初旬、胡子に対し、電話で江田島市内の漁協組合へのあいさつ回りをする際に来てほしいと伝え、胡子はそれを了承した。克行は、同月10日、元公設秘書と共に江田島市を訪れ、江田島市内の各漁協の組合長らに対し、被告人のポスターを配るなどして、本件選挙における被告人への支援をお願いして回った。その際、元公設秘書が胡子に対し、被告人が参加できる江田島市内の地域行事がないかと確認すると、胡子から、同人の父親主催のカラオケ大会が同月16日にあると紹介され、被告人はこのカラオケ大会に参加することとなった。

 その後、克行および元公設秘書が江田島市内から帰る車中において、克行が元公設秘書に対して茶封筒を渡し、それを胡子に渡すよう指示した。茶封筒の中には、現金10万円在中の封筒が入っていた。克行からの説明はなかったが、元公設秘書は、この茶封筒には現金が入っているかもしれないと考えた。

 ウ元公設秘書は、胡子に克行から預かった茶封筒を渡すため、胡子に対し、電話で、1度会いたいので時間を取って欲しいと伝え、その結果、同月14日に胡子と会うことになった。そこで、元公設秘書は、同月11日の業務日報(被告人や克行、そのほかスタッフへの連絡に用いる報告書)に、他の予定等と一緒に「江田島胡子市議(金曜日にお会いします)」と記載し、被告人や克行らにその業務日報をメールで送信した。この記載に関して、被告人から元公設秘書に対して問い合わせはなかった。

 

 エその後、胡子と上記予定の日に会えなくなったため、元公設秘書は、カラオケ大会において胡子に茶封筒を渡すこととした。そこで、元公設秘書は、胡子と連絡を取って、カラオケ大会で会う約束をし、克行に対して、電話でその旨を伝えた。
(ここまで 1500文字/記事全文 5075文字)

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