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【ウエーブ】現代アーティスト・岸かおるさん(64)=広島市東区

2021/1/29 4:59
「私にとってアートを制作することは、生きていることと同じ」。命の重さと対価をテーマとした立体作品「spare―part」を手にする岸さん(撮影・河合佑樹)

「私にとってアートを制作することは、生きていることと同じ」。命の重さと対価をテーマとした立体作品「spare―part」を手にする岸さん(撮影・河合佑樹)

 ▽社会えぐる発想 具現化

 専業主婦として3人の子どもを育てた後、50代から大学で学び直し、現代アーティストとして活動を始めた。お菓子でこしらえた「きのこ雲」(2010年)、福島第1原発事故で破損した原子炉建屋の模型を毛糸の編み物で包んだ「cover」(11年)、華麗なビーズ刺しゅうで心臓移植を表現した「spare―part」(13〜19年)…。家庭で培った料理や手芸の腕前をふるい、現代社会に鋭く迫る作品を生み出す。

 幼い頃から絵が得意で、写生大会では賞をもらった。でも「何を描いてもいいよ」と言われると、テーマが見つけられず途方にくれる少女だった。高校時代は「数学以外は悲惨な成績だった」。工業デザインが学べる京都の大学を知り「面白そう」と憧れた。1浪して入学を果たした。

 30人いた大学の同級生は男女比半々で、性別の分け隔てなく切磋琢磨(せっさたくま)した。4年生になって、男性から順番に有名企業に就職が決まる現実を目の当たりにした。自信を失い、就職を諦めた。

 大学卒業後間もなく予備校時代の同級生と結婚。勤務医になった夫を支えて家庭に入り、1男2女の子育てに奮闘した。おやつや子ども服を手作りし、PTA活動にも熱心に参加。英会話などの稽古事にも打ち込んだが「企業で働く同級生はキラキラしてみえた。片や自分は…と、劣等感の塊だった」
(ここまで 570文字/記事全文 1131文字)

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