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冬の里山「まきストーブ」が熱い 閑散期の集客に/業者は販売促進 広島県世羅町
山林が面積の3分の2を占める広島県世羅町で、厳冬期に活躍する「まきストーブ」が注目されている。設置した町内のカフェは閑散期の魅力として集客に生かし、展示販売する業者は「炎を見て安らぐ人が多い」と商機をうかがう。新型コロナウイルス禍のアウトドア需要を追い風に、里山整備の機運を高めようとする住民もいる。
実家の古民家を改装した西上原のカフェ「案山子(かかし)」。町内の朝は氷点下まで冷え込むが、店内は上着が要らないほど暖かい。店主の深串昭二さん(72)は「寒波でまきは例年の倍くらい消費するが、自力調達で光熱費も節約できる」と笑う。約5年前の設置後、年間に占める冬場の利用客の割合は2割ほど増えた。
設置を請け負う本郷の佐々部材木店世羅支店は2019年に事業承継した後、担当者が埼玉県まで研修に行き、販売を継続する。町内外で年4、5件を受注し「母屋に加え、離れに構えるファンもいる」という。
店内では4台を展示販売。灯油より環境に優しい点もPRする。まきは燃やすと二酸化炭素が出るが、二酸化炭素を吸収する広葉樹のコナラなどの間伐材が原料になるため、トータルでは環境への負荷は増えないという理屈だ。
一方で、コストの課題はある。まきストーブの設置は100万円程度が必要。町は14年度以降、10万円の購入補助制度を設けた。毎年度利用はあるものの予算は限られ、20年度までに計24件の利用にとどまる。まきを全て買って賄う場合、灯油より燃費がかさむケースもある。まきの出荷者の労力は大きく、買い取り支援を求める声もある。
コロナ禍のアウトドア志向で里山へ関心は高まる。世羅郡森林組合は、20年度のまきなどの売れ行きが19年度の約1・5倍に拡大。寒波の到来した1月上旬には、在庫が品薄になった。山口勝博組合長(66)は「山のロマンを共有するチャンス」と受け止める。
自宅でまきストーブを使う西上原の岡本信正さん(72)は、里山を身近に感じてもらおうと道の駅世羅でまき割り体験などを定期的に開催している。
所属する住民団体で地域山林の手入れもする岡本さんは「里山保全は労力がいるがやりがいもある。まきストーブの趣も味方に付け、今こそ裾野を広げたい」と意欲を燃やす。(神下慶吾)
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