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哲代おばあちゃん 100歳 きょうも好日

2021/3/9

人生100年時代のモデルを見つけた。広島県尾道市の山あいの集落で1人暮らしをする石井哲代さんは100歳。小さな畑を耕し、朝は必ずいりこのみそ汁をこしらえ、毎日の日記を欠かさない。ご近所さんたちの助けを上手に借りながら、自律した生活を送る。「さびない鍬(くわ)でありたいの」が口癖だ。体も頭も心も、鍬のように使い続ければさびることはないという。年を重ねた分だけ、人は強くなり、やわらかくなる―。哲代おばあちゃんの日常を月ごとに追いながら、そんな老いてこその輝きに触れてみたい。(鈴中直美、木ノ元陽子)


哲代さんの日常

4月 突然の入院、また一つ勉強 → 記事はこちら

3月 尾道で講演しました → 記事はこちら

2月 先々の楽しみが張り合い → 記事はこちら

1月 私を支える七つの習慣 → 記事はこちら

12月 子どもと歩いた人生です → 記事はこちら

11月 嘆くより忙しゅう動きます → 記事はこちら

10月 さびない鍬でありたいの → 記事はこちら

ご機嫌100歳の「さしすせそ」
哲代流 人生を引き立てる五つの言葉

哲代さんが、人生を味わうための「さしすせそ」を教えてくれた。老いることが楽しみになるような調味料。きっと私たちも手に入れることができる。

▽「さ」さびない鍬(くわ)でありたいの

天気のいい日は、畑に出ます。50年近く愛用した鍬で耕すの。使い込んで先がちびてまあるくなってるけど、まだまだ現役です。私の手も鍬と同じ。長年使って曲がってしもうて。若い頃からずっと「さびない鍬でありたい」と思ってきたの。何かしてないと人間もさびるでしょ。身体も頭も気持ちも使い続けているとさびないの。鍬は私の一生。宝物でございます。

▽「し」習慣が私を支えてくれます

朝起きたら、布団を畳んで押し入れに収めます。それが私の朝イチの仕事です。ちゃんと目が覚めて布団を上げられるのは幸せなことじゃと思うんです。朝ご飯はいりこだしのみそ汁と決めとります。それから、天気のいい日は畑の草を抜きます。代わりばえのせん毎日で申し訳ナイチンゲール。へへへ。定番のだじゃれでございます。じゃけど、その繰り返しが健康のバロメーターになっとります。「よし、きょうも大丈夫」ってなもんですな。

▽「す」好きなように生きる

小学校の教員をしとりました。農家の嫁でもあったから、学校が終わったら飛んで帰って暗くなるまで畑仕事をしたもんです。その分、今は好きなように自由を謳歌(おうか)しとります。さて何をしようか、何を食べようか。自分で考えて、決めて、行動するいうんが大事じゃ思うの。施設に入ったらそうはいかんでしょう。きょうも友達と日が暮れるまで大おしゃべりしとりました。ほんと、ありがたいことです。

▽「せ」せつない気持ちは日記にちょびっと

雨の日は寂しい気持ちになります。畑にも出られんし、誰とも顔を会わさんでしょう。すると気持ちがふさいで心配事が頭をもたげるんでございます。主人は18年前に亡くなったんじゃが、私ら夫婦には子どもがおりません。だから自分が人生をしまうとき、周りに迷惑をかけにゃええがと考えてしまうの。子どもがおったら安心じゃったろうにって―。悩み事は日記にちょびっと書きます。そしたら心がすーっとするの。どうしようもないことよって、自分で納得するんじゃろうねえ。

3年日記をずっと付けよります。会った人や畑のことを思い出しながら夕食後に書くんです。去年がちょうど3年目でしたから、今年は新しい日記を買いました。この日記が終わるころには103歳ですか。どうなりましょうに。紙を粗末にできんから長生きせんといけませんのう。

▽「そ」その日、その時を全力で

家の前に急な坂があります。これを下りんことには畑にも行けん。後ろ向きになって鍬を杖(つえ)にして、そろりそろり下ります。この坂も家の中の段差も私を鍛えてくれとるんですなあ。

毎週月曜日は、近くの集会所に地域のおばあさんたちが集まります。大正琴を弾きながら歌を歌うの。まあ、練習はちょびっとでございます。ストーブを囲んでおしゃべりして、笑うて。これが楽しゅうてね。水曜日のデイサービスも待ち遠しい。体操でも何でも全力でやるんでございます。一つ一つをどう楽しむか、心の持ちようで日々の暮らしに張りが出る気がします。

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