手を握り返してきた男性…命救えず アストラム橋桁落下30年、無念今も 安芸消防署長の原田さん
▽直後に現場へ 経験をつなぐ
1991年3月に広島市安佐南区上安2丁目のアストラムライン建設現場で橋桁が落下して15人が亡くなった事故は14日、発生から30年を迎える。市安芸消防署長の原田俊治さん(59)は直後に現場へ急行し、救助活動を担った一人だ。凄惨(せいさん)な現場の光景や命を救えなかった無念さは今も消えない。あの日の思いを若い後輩に伝え続けている。
【事故発生時の初報】橋げた落下事故 62トン、車11台押しつぶす
【写真】30年前、橋桁落下の事故現場
午後2時5分ごろに発生した事故。当時、市安佐南消防署佐東救助隊の副小隊長だった原田さんが現場に着いたのは、その14分後だった。
▽100人の群衆は無言
「100人以上いた群衆が一言も発していなかった」。長さ約63メートル、重さ約60トンの鉄製の橋桁が約10メートル下の県道に落下。信号待ちの車11台が下敷きになっていた。車高はわずか0・5メートルほどまでに押しつぶされ、ガソリンに引火して炎上していた。それなのに異様なまでに静かだった、と原田さんは振り返る。
運転席がつぶれた車をこじ開け、助手席から男性を助け出した。他の車へ移ったが、橋桁が活動を妨げた。手持ちの資機材では何もできなかった。閉じ込められていた男性に手を差し出すと、握り返してきた。その力は少しずつ弱まり、絶えた。
本格的に活動できたのはクレーン車で橋桁を撤去した午後4時15分ごろ。発生から既に2時間余りがたっていた。
原田さんはその後、交通事故や火災、水難の現場を幾度も踏んだ。あの日の無力感を振り払うかのように訓練を重ねた。
多くの負傷者と向き合う中で、ある信念が培われたという。「命を救うだけではなく、人生を救う『人生救助』をしなければならない」。事故に遭った人が以前と同じように社会復帰できるよう、一歩でも前に、一秒でも早く。その原点は、29歳の時に遭遇した橋桁落下事故だった。
▽機材や体制強化
事故後、市消防局では、大型車両も持ち上げられるジャッキや、事故車両などを切断できる高性能カッターといった資機材が順次導入された。負傷者が多数に上る大規模事故を念頭に、消防と警察、医療従事者が現場で情報共有し、緊急性の高い人から優先的に搬送、治療する仕組みなどの連携体制も整えた。
団塊世代が大量退職し、同局には事故をリアルタイムで知らない世代が増えた。原田さんは訓練で技術力を高める必要性とともに、現場経験の伝承が大切だと力を込める。「失敗や課題を余すことなく伝えるのが私たちの使命」。あの日のことを、あらゆる機会に若い職員に語る。
今月10日、原田さんは現場近くの慰霊碑を訪ねた。「今は大規模な事象にも対処できます。安らかにお眠りください」。発生時刻と同じ午後2時すぎ、そっと手を合わせ、静かに目を閉じた。(根石大輔)
<クリック>アストラムラインの橋桁落下事故 1991年3月14日、広島アジア大会(94年)の観客輸送機関として整備中だったアストラムラインの工事区間の広島市安佐南区上安2丁目で発生。降下作業中の約60トンの橋桁が約10メートル下の道路に落下し、信号待ちの車11台を押しつぶした。車内の人や橋桁と一緒に転落した作業員の計15人が死亡し、8人が負傷した。事故を巡り、元請け業者の社員3人が業務上過失致死傷罪に問われ、広島地裁は96年3月、1人に実刑判決、2人に有罪判決を言い渡し、その後に地裁判決が確定した。
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