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まだ見ぬカープ日本一 筋ジスの男性、画用紙に夢乗せマツスタ再現

2021/3/19 20:39
増田謙一郎さん

増田謙一郎さん

 バックネット側からバックスクリーン側までの奥行きが約60センチ。幅にして約47センチ。3万3千人を収容する「実物」と比べると、ほぼ1650分の1の寸法だ。筋力が徐々に衰えていく筋ジストロフィーの増田謙一郎さん(30)が、画用紙を主に使ってマツダスタジアム(広島市南区)を再現した。名付けて「増田(マスダ)スタジアム」。重さは2キロ余りで、土台は段ボール。6年がかりで仕上げた。

【写真】増田さんが完成させた画用紙製のマツダスタジアム

 増田さんは2008年から広島西医療センター(大竹市)に入院し、人工呼吸器と電動車いすの生活を続ける。首と右手の親指を少し動かせる。小学生時代からの熱心な広島東洋カープのファン。例年、マツダスタジアムを年3回ほど、介助を受けて観戦に訪れる。引退した選手では前田智徳さん、現役なら森下暢仁投手がお気に入りだ。

 カープの日本一は1984年が最後。生まれる前のことだ。最高の瞬間を願って04年ごろから観戦を続ける中、カープの選手が躍動するスタジアムを再現したい気持ちが高まった。「そうだ、大きな模型を作ろう。車いす席に、毎回親切に案内してくれるスタッフへの感謝も込めて」

 制作を始めたのは15年ごろ。しかし1人で作ることはできない。センターの作業療法士に応援を頼んだ。増田さんがインターネットで球団ホームページの情報や航空写真を確認し、指示を出す司令塔で、療法士は画用紙を切って接着剤で貼り付ける役割。作業療法の時間を充てて作り続けた。

 少しずつ整形する根気強い作業。グラウンドの芝や球場周辺の植え込みは、折り紙や着色したスポンジで表現するなど工夫した。ナイター用照明を再現するため、豆電球も付けた。「どこまでできるか」と手探りだったが、やがて夢中に。余ったスペースには、観戦時に利用するJRの列車や線路を配置し、再現度を高めた。

 19年にいったん完成したが、実物のスタジアムの座席レイアウトが変わったため改良。ことし1月に再び、細部にこだわった「夢の器」を完成させた。作業を担ったセンターの療法士は計2人。改良版をともに仕上げた長谷宏明さん(41)は「カープ談議もできて貴重な時間だった」と振り返る。本人は「出来栄えは90点かな」。パフォーマンスシートの出来に満足しつつ、内野自由席の座席が少し凸凹したと気にする。

 新型コロナウイルスが感染拡大した昨年。15年以上の現地観戦はいったん途絶えた。コロナ禍でセンターが面会禁止になり、この完成品を親族や知人に披露できていない。センターの食堂に置き、26日に開幕する新シーズンへ気持ちを高ぶらせている。

 病室のベッドで願い続けることは、たった一つ。

 37年ぶりの日本一。頼むぞ、カープ。(白石誠)


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  • 増田さんが、作業療法士と6年がかりで完成させた画用紙製のマツダスタジアム

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