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馬毛島の市長「離島の人間ばかにしている」 米軍機訓練移転先、国計画に不同意強調

2021/3/30 19:29

八板俊輔市長

 鹿児島県西之表市の八板俊輔市長が中国新聞の取材に応じた。米軍岩国基地(山口県岩国市)に拠点を置く空母艦載機の陸上空母離着陸訓練(FCLP)の移転を前提に進む、馬毛島への自衛隊基地の建設について「失うものの方が大きい」と反対する姿勢を強調。問題について国民全体での議論を呼び掛ける考えを示した。

 ―馬毛島への基地の建設計画が進んでいます。地元市長として「同意できない」としている理由を教えてください。

 西之表市のある種子島には移住者が多い。静かで暮らしやすく、子育てしやすいからだ。基地の交付金を使った地域振興策に期待する人もいるが、交付金はあくまで負担への迷惑料。基地ができれば、子孫に負担を残すことになる。周辺の豊かな漁場も損なわれる。

 米軍への提供施設は日米地位協定によって日本の国内法で制御しにくい。既に基地がある地域では戦闘機が想定と違うコースを飛んだり、部品を落としたりする問題があり、抗議しても繰り返される実態がある。失うものの方が大きい。

 ―なぜ「反対」ではなく「同意できない」と表現するのですか。

 「同意できない」という言葉は当事者だからこそ使える表現。市民には賛成、反対それぞれの考えがあるが、どちらも市の将来を憂いて判断している。市長は両方の立場の代表。市民の分断をあおってはいけないという意味も込めている。

 ―市の人口減少が進む中、基地に頼らないまちづくりをどう進めますか。

 市の人口は1万5千人。半世紀でほぼ半分になった。それでも近年、人口減少のカーブは国の推計よりも緩やかになっている。若者の多くは高校卒業後に種子島を出て行くが、30代半ばになると戻ってくるケースが多い。都市部からの移住者も増えている。こうした動きを促すために、どうすれば良いか考えないといけない。観光資源を発掘し、施設を整備していく。1次産業も重要。伐採期を迎えたスギの搬出に向け、港の整備も進める。

 ―では、馬毛島をどう活用しますか。

 馬毛島にはニホンジカの亜種マゲシカを頂点とする豊かな動植物がある。弥生時代の遺跡など、無人島だからこそ守られたものがある。自然や歴史、文化を生かした観光や研究に活用したい。

 ―1月末の選挙で再選を果たしましたが、基地計画を容認する候補との差は144票の僅差でした。

 相手候補を応援するために政権与党がしゃかりきになって、各種組織の上層部を押さえる中での勝利。私は144票差は相当な差だと思う。今後は市民が基地経済に頼らずに1次産業を軸とする産業振興に力を合わせないといけない。

 ―国は基地建設を進める姿勢を変えていません。

 防衛省は「地元の理解と協力が必要」としている。普通に理解すれば、地元の了解がないとできない。「国が決めたから止められない」というのは幻想だ。

 米軍のための施設なのに、国が自衛隊の基地をつくると強調していることも問題だ。自衛隊の訓練も加わり、馬毛島に一大要塞(ようさい)ができようとしている。国にとっては馬毛島は日本の南の果ての無人島。そこにFCLPを持って行けば米国の要望に応えられる。人口は少ないし、あれこれ言いくるめればできるんじゃないかと。離島の人間をばかにしているのではないかと思う。

 ―岩国基地周辺の住民には地元でFCLPをする可能性がなくなるなら、早く馬毛島に基地を整備してほしいという声もあります。

 岩国の市民が「うるさいのは嫌だ」と思うのは当然だ。ただ、馬毛島はどうでもいい無人島ではない。私たちも基地になると本当に困る。へき地だからこそ残された、この土地にしかない資源がある。それはわれわれの財産であるだけでなく日本の財産。日本国民全体にこの問題を考えてもらいたい。

 やいた・しゅんすけ 1953年、鹿児島県西之表市生まれ。早稲田大政治経済学部卒業後、朝日新聞社入社。社会部記者、熊本総局長などを経て2012年に退職し、帰郷。2017年、西之表市長に初当選し、2期目。


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  • 西之表市の高台から望む馬毛島(奥)
  • 西之表市の中心街に掲げられた基地建設反対の看板

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