高齢者の減薬へ連携 広島市と薬剤師会・医師会、レセプト活用し副作用防止・費用減へ
広島市が市内の薬剤師会や医師会と連携し、高齢者が服用する薬の量を減らす取り組みに力を入れている。国民健康保険などのレセプト(診療報酬明細書)を活用して処方薬が多い高齢者に通知書を送り、削減を促す仕組み。適正な服薬で副作用を生じさせにくくするとともに、薬剤費を減らす効果を見込む。取り組みを参考にした厚生労働省が、薬局向けの診療報酬を改める動きも出ている。
取り組みでは、国民健康保険と後期高齢者医療制度の加入者の中から、レセプトを基に多くの薬を併用している高齢者を抽出。薬の名称や数量などの服薬情報を載せた通知書を送る。
受け取った高齢者は、薬局に通知書を持参。薬局の薬剤師が飲み合わせの問題などを確認し、改善の余地があれば医師にリポートを送って減薬につなげる。全国の20政令指定都市では例のない対応としている。
厚労省などによると、多くの薬を併用するケースのうち体に害をなすものは「ポリファーマシー」と呼ばれる。高齢者を中心に物忘れやふらつき、転倒などの副作用が出て、薬の影響で転んで骨折したり、寝たきりや認知症になったりする場合があるという。
ポリファーマシーの防止へ処方薬を把握する手段の一つに、薬局が配る「お薬手帳」がある。ただ複数の手帳を所持して各薬局で使い分けるなど、服用薬を正確に把握できない場合が多いとされる。レセプトでは一人一人の処方薬を全て把握できる利点がある。
市は2018年3月、協定を市内の4薬剤師会や3医師会と協定を結び、対策を推し進めている。18年度は10種類以上の処方を受ける高齢者3万126人、19年度は9種類以上の2万8882人、20年度は7種類以上の3万8302人に通知書を送った。21年度は6種類以上に広げる。
このうち19年度の効果をみると、同じ成分の薬を飲んでいた人の76%、飲み合わせが悪かった人の78%で減薬などの改善につながった。国民健康保険の加入者では、1人当たりの薬が14・6種類から12・3種類に減少。市と患者が負担する薬剤費を1860万円削減できたと説明する。
厚労省は市の取り組みが成果を上げているとして、20年度の診療報酬の改定で、多剤併用の解消を医療機関に提案した薬局への報酬を新たに設けた。
市保険年金課は「薬剤師会や医師会との密接な連携が奏功している。薬で健康を害する人を減らしたい」と意気込む。市薬剤師会(東区)の中野真豪会長は「不要な薬を漫然と飲み続けると副作用が出ることもある。身近にある薬局に相談してほしい」と呼び掛けている。(余村泰樹)
<クリック>ポリファーマシー 多くの薬を服用する「多剤併用」のうち、体に害を及ぼす事例を指す。日本老年医学会が2015年度にまとめたガイドラインによると、服用薬が6種類以上の高齢者では物忘れなどの副作用が増え、ふらつきと転倒は5種類以上を服用する高齢者の40%以上で発生しているとされる。多剤併用を巡る厚生労働省の19年の調査では、75歳以上の4人に1人が、1カ月間に1カ所の薬局から7種類以上の薬を処方されているとの結果が出ている。
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