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「大麻リキッド」摘発増加 20年と既に同数、若者への広がり警戒
広島県内で大麻を加工した液体状の「大麻リキッド」を巡る摘発が増えている。県警は今年に入って5件を摘発し、既に昨年1年間と同数となった。うち1件は高校生の所持容疑だった。電子たばこで加熱して吸うため、抵抗感や罪悪感が乾燥大麻より薄いと指摘される一方、成分が濃縮されており作用や依存性は強いリキッド。会員制交流サイト(SNS)での密売も横行し、県警は若者への拡大に神経をとがらせている。
「(リキッドを)晩酌代わりに毎日吸っていた。周囲もやっていたし、軽い気持ちだった」。今年1月、大麻取締法違反(所持)容疑で逮捕、起訴された広島市南区の自営業の男(22)は法廷でそう語った。
先輩から勧められ、初めて大麻を吸ったのは18歳の頃。その後、密売人を通じて自分で購入するようになった。リキッドを初めて試した時には「手軽に使えるから驚いた」という。捜査関係者によると、男は追突事故を起こして所持が発覚。当時、運転中に吸っていた。広島地裁は3月、執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。
リキッドを巡っては、県警は2018年1月、30代男を所持容疑で初摘発。薬物銃器対策課によると、県警が押収・摘発した件数は18、19年は各1件だったが、20年は5件に。今年は3月末までに5件に上っている。
3月には高校生男子(18)が所持容疑で逮捕され、10代にも広がっている現状を浮き彫りにした。複数の関係者によると、この高校生は相当量のリキッドを持っていたという。税関が押収したため県警の統計には含まれていないが、バスケットボール男子Bリーグ1部(B1)の広島ドラゴンフライズ元選手(28)も国際郵便で米国から輸入したとして逮捕、起訴された。
薬物問題に詳しい横浜薬科大の篠塚達雄教授(法中毒学)は「リキッドは蜂蜜などに見せかけて密輸される手口が多い。17年夏ごろから国内で徐々にまん延し、今や主流になった」と指摘する。財務省によると、20年の全国の税関による大麻草の押収量は前年より減少した一方、リキッドを含む「大麻樹脂等」は約3・2倍になった。
SNS上では隠語での売買が横行している。実際にツイッターで検索してみると「リキッド入った。野菜(大麻)も。山口、広島手押し(対面取引)」といった書き込みがあふれている。
同課によると、県警が20年に同法違反容疑で摘発した57人のうち、30歳未満は28人と全体の約半数を占めた。県警は「リキッドが広がれば、若者の乱用がさらに進む可能性がある」と警戒する。サイバーパトロールでSNSの監視を強めるほか、小中高校や大学で薬物の危険性を訴える教室も継続して進める。(根石大輔)
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