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母と弟発熱、そして私も… コロナ感染、中国地方50代女性の体験<上>(2020年8月12日掲載)
新型コロナウイルスに感染した中国地方の50代女性が中国新聞の取材に応じ、感染確認までの経緯や入院生活、退院後に一変した暮らしについて語った。三次市で4月に発生した広島県内初の新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)の関係者で、80代の母親と50代の弟も感染。不確かな情報に惑わされず、それぞれができることについて考えてほしいと訴える。
5月2日に広島市内の感染症指定医療機関を退院して約3カ月。ようやく県外の自宅に戻れた。振り返ってみると、新型コロナ感染を機に生活が一変した。
最初に感染したのは、三次市内の実家で暮らす母親だった。ダウン症の弟との2人暮らし。私は定期的に帰省しては、2人の身の回りの世話をしていた。
▽看護師は防護服
4月6日、母親が発熱したとの連絡を市内のデイサービス施設から受け、実家に戻った。熱が38度台まで上がり、車でかかりつけ医に向かった。駐車場で待たされ、車から降りることなく窓を少しだけ開け、インフルエンザの検査と血圧測定を受けた。看護師は防護服を着ていた。新型コロナが全国に広まっていた時期とはいえ、「何か変だ」と違和感を抱いたのを覚えている。
8日に市内で初の感染者を確認したが、当初は、80代の訪問サービスの利用者女性としか分からず、母親の感染は全く考えていなかった。ところが翌日、担当のケアマネジャーからの電話に衝撃が走った。「(施設の利用者で)肺炎になったという人が(2人目の)新型コロナと分かった」。その前日には弟も発熱しており、「母親も弟も感染しているかもしれない」と直感した。頭の中が真っ白になった。
母親は10日、市内の病院でPCR検査の検体を採取。夕方に陽性と分かった(県は12日未明、県内初のクラスター発生を発表。母親はその1人に含まれていた)。ただ、認知症がある母親のことを考え、当面は自宅で療養することにした。
その日を境に、実家にこもる生活に変わった。近所の人には「私たちを見たら近寄らないで」と知らせた。話し好きの母親が外で立ち話をするのは避けたかった。玄関には張り紙もして、宅配の配達員が家族と接触しないようにした。
▽車内「3密」状態
幸い近所に感染者が出ることはなく、中傷も受けなかった。ただ、弟が通う施設の関係者らしい人から電話が3度あり、「弟のせいで仕事がなくなった」と言われて怒りがこみ上げた。
私と弟は、濃厚接触者として12日に検体採取のため病院を再訪。母親を1人で家に残せられず、3人が乗った車内は「3密」状態だった。病院の駐車場には他にも感染疑いの人たちが集まっており、検体採取は2時間待ち。時間を指定してくれればいいのにと思った。弟の感染はその日に判明した。
母親の食欲が徐々になくなり、体調が悪化したため、14日、弟と一緒に県内の指定医療機関に入院した。人工心肺装置「ECMO(エクモ)」は一つしかなく、医師から突然判断を迫られた。「もし母親が重症になった時、つけますか。弟には」。驚いたが、とっさに決めないといけなかった。家族だから答えられることだった。
このまま県外の自宅に戻るのはためらわれ、私も陽性かもと心配が募り始めた18日、発熱。味覚異常もあった。ご飯とみそ汁はまずく感じ、イチゴはおいしかった。翌日、PCR検査で陽性と判明し、救急車で広島市内の指定医療機関に運ばれた。肺炎の症状はなかったが、夜になると39度近くの熱で苦しんだ。
新型コロナの治療薬候補とされたインフルエンザ薬「アビガン」を1日8〜18錠服用した。「このまま退院できないかもしれない」と不安だった。移動の自粛が呼び掛けられる中、県外に住むもう1人の弟に「母親と弟に何かあった時は帰ってくるように」と伝えておいた。(聞き手は小山顕)
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