地域ニュース

新型コロナのクラスター、松江市の店名公表 特定に効果も中傷広がる(2020年4月25日掲載)

2020/4/25 20:59
市内でクラスターが発生したとして店名を公表する松浦市長(11日未明)

市内でクラスターが発生したとして店名を公表する松浦市長(11日未明)

 松江市は4月上旬に市内で判明した新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)で、発生源の店名を当初から公表した。想定通り感染者の特定に効果があったとする一方、店や感染者への誹謗(ひぼう)中傷が会員制交流サイト(SNS)などで広がり、対応に追われた。専門家は感染防止策と、人権の擁護を両立させるため、各自治体が住民に明確な基準を示すよう求める。

 ▽専門家「自治体は明確な基準を」

 11日未明、市役所で会見した松浦正敬市長は、現場となった飲食店を「BUZZ(バズ)」と公表した。「多くの方が店を利用していると予想され、スピード感を持って感染範囲を特定する必要がある」と強調。立ち寄った客などに連絡を求めた。客の勤務先などが新たな感染源となることを防ぐ狙いもあった。

 翌12日までに市や保健所に苦情も含めて約500件の連絡があった。市はこれらを基に、客などの関係者が約100人いると把握。24日までに139人のPCR検査をし、関連も含めて計16人の感染が判明した。

 ▽感染者探し続く

 市は公表にあたり店の経営者を重ねて説得し、了承を得た。公表から約2週間。市は一定程度、終息に向かったとの認識を示す。健康部の小塚豊部長は「早期に呼び掛け、利用者が検査に応じてくれたことが、この期間での終息につながった」と振り返る。

 一方、SNSなどでは連日、誹謗中傷や、責任を問う書き込みが続いた。感染者探しをする動きもあり、店がSNS上で謝罪する事態も。松浦市長は「今後、公表をためらう人が出ることも予想される。このような行動は厳に慎んでいただきたい」とコメントし、危機感を発信した。

 市の情報公開にもぶれがが見られた。15人目の感染者の公表で、これまでと異なり、本人の意向として年齢と性別だけを伝えた。どのような状態で、どの場所に出入りしたのか。市民に新たな不安を招きかねない公表の仕方だった。

 感染者情報では、国は行動歴などの公表基準を設けておらず、自治体の判断に委ねられている。感染者の特定や差別を招かないよう配慮され、対応は異なる。兵庫県姫路市では市がクラスターと判断するも、企業は名前の公表に同意せず、操業を続けた。広島市はクラスターが発生した施設名を「風評被害を防ぐ」として出さなかったが、施設側が自主的に明らかにした。

 何の情報が要るのかも課題だ。最初の感染確認となった女子高生がPCR検査に至るまで、県市が共同設置する松江保健所に母親が3回相談したが、市は発表でこの点に触れなかった。丸山達也知事は「患者さんが積極的な行動をしていたことが公表されていないのは残念」と注文を付けた。

 保健所に多くの相談が寄せられていた時期で、どこまで情報の精査に労力をさくかは考えが分かれる。市の幹部は「初めてのケースで日々手探り。試行錯誤を繰り返している」とする。

 ▽役所に賛否の声

 店名の公表について、市役所にも、賛否の声が相次いだ。市内で飲食店を営む40代男性は「感染拡大を防止するためには協力しないといけないと思う。しかし自分の店となると風評被害が心配だし、生活もかかってくる。難しい判断だ」と悩ましさを吐露した。

 島根大の毎熊浩一教授(行政学)は「行政が公表する範囲を、感染者本人の意向によって必要以上に伏せると、市民の不安感が増し、かえって感染者の詮索や誹謗中傷につながりかねない」と指摘。「自治体が科学的な根拠に基づき、開示する情報の基準を示すべきだ」と強調する。(高橋良輔)

 <クリック>松江市で発生した新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団) 接客を伴う飲食店「BUZZ(バズ)」が発生源。市は4月9日、店でアルバイトをしていた女子高生の感染を確認し、11日未明にクラスターだと公表した。25日夕までに、女子高生を含む従業員4人と客9人の計13人の感染が判明。関連で同居する家族など3人も感染していた。島根県内で初めて確認した感染例でもある。 

 関連記事「出雲市で初の感染者、島根県内で17人目」

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

アーカイブの最新記事
一覧