地域ニュース

クラスター発生施設に中傷相次ぐ 暴言・出社禁止、家族まで標的(2020年4月15日掲載)

2020/4/15 23:27

 新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した広島県内の福祉施設などに対し、誹謗(ひぼう)中傷が相次いでいる。利用者や職員にとどまらず、その家族まで、いわれのない批判の標的になっている。福祉関係者らからは「あまりにひどい」「懸命に対応している現場を追い詰めてしまう」と心配する声が上がっている。

 県内初のクラスターは、三次市のデイサービスセンター水明園などで発生。事業者は感染拡大を防ぐために名前を公表した。ところが聞き取りをした県によると、利用者が自宅の近くを歩いていただけで暴言を吐かれたり、離れて暮らす家族が会社から出勤を禁じられたりしたという。職員の家族も地域の集いへの参加を拒まれるなど、不当に扱われているケースがある。

 広島市佐伯区の障害者入所施設「見真学園」も、クラスター発生が確認された14日から電話が鳴りやまない。「感染した職員をクビにしろ」との批判もあるという。ネット上には、個人情報を暴こうとするような書き込みもある。職員の1人は「指摘は真摯に受け止めるが、対応に追われ、業務に支障が出るのがつらい」と声を落とす。

 尾道市の社会福祉法人理事長で全国老人福祉施設協議会の平石朗会長(65)によると、クラスターが発生した名古屋市の高齢者施設では、子どもの実名をネットにさらされた職員がいた。平石会長は「現場は不眠不休で感染拡大防止や利用者のケアを続けている。闘うべきは感染症なのに」と悔しさをにじませる。

 湯崎英彦知事が記者会見などを通じ、差別的な言動を慎むよう訴えていることに触れ「行政トップが『誰のせいでもない』と発信し続けてほしい」と求める。

 個人攻撃も相次ぐ。西区の40代女性は、クラスターが発生した京都産業大(京都市)に通う息子がいる。息子は感染者と接触していないが、京都のバイト先に解雇されたという。女性は「息子は『知らないうちに感染しているかも』と帰省を自粛している。狭いアパートにこもり、心の病にならないか心配」と案じる。

 広島市立大(安佐南区)でも、3月下旬に市内であった会食に参加した学生の感染が判明。市がこの会食を新たなクラスターの発生源とする認識を示した15日、同大はホームページで、学生や教職員に「感染者の誹謗中傷は絶対にしてはならない」と求めた。(田中美千子)

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

アーカイブの最新記事
一覧