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「10万円活用」1日で幕 広島知事発言、「身を切る姿勢」空回り(2020年4月22日掲載)

2020/4/22 23:37

 ▽ネットや議会、反発続出

 新型コロナウイルスの経済対策として広島県職員が受け取る10万円を県の対策事業の財源に充てる考えを示していた湯崎英彦知事が22日、発言からわずか1日で態度を翻した。財源確保へ「身を切る姿勢」を打ち出そうとしながら、部下の給付金を当て込む強権的な発想と受け止められ、県民や県議会から反発が続出。事実上の撤回を余儀なくされた。

 「お願いという名の強要だ」「まるでブラック企業」…。湯崎知事が、国が全ての国民に配る給付金のうち県職員分の「活用」を検討するニュースが流れた21日夕以降、インターネット上に批判コメントがあふれた。感染拡大の防止に当たる公務員の妻を名乗る人物は「給料減らないでしょ?と言われるが、かなり激務で、残業も過労死レベル」と窮状を書き込んだ。

 ▽提言メール2000件

 県民の意見を県政に反映させるため、県がホームページで受け付ける「県政提言メール」には22日午後3時までに、関連する声が約2千件届いた。「お金が必要な人に回る」とする肯定的な受け止めもあったが、「公務員の生活は決して楽ではない」「職員の士気が下がる」などと批判的な内容が大半を占めた。

 「言葉の選び方が悪かった」「あらためて真意を説明している」…。湯崎知事は22日昼の取材で、21日夕の発言を釈明した。国の給付金を活用するとした考え方を「誤解を生む言い方」として結果的に取り下げることで、火消しを図った。

 国の給付金を念頭に県職員の「協力」に踏み込む今回の考えは、湯崎知事によるトップダウンで発案された。突然の発言を、多くの県職員や県議は「県事業の財源に、国の給付金を充てるのだと思った」(50代課長男性)と受け止めた。

 発言を事前に知らされたのは、ごく一部に限られていたという。ある県幹部は「当面の給与が減らない公務員に対する10万円の給付には批判も出ていた。県が身を切る覚悟を示せば賛意が広がるとの思惑だったのだろう」と推し量った。

 県議会の反発も強かった。中本隆志議長によると、21日夜に電話をかけてきた湯崎知事に「容認できない」と抗議。翌22日朝には面会して「このままだと反対せざるを得ない」と伝え、「撤回表明」へのレールを敷いた。

 「10万円はみんなで新型コロナを乗り切るための資金。県の財源とは関係のない話でけしからん」。湯崎知事が発言を事実上撤回した後に記者会見した中本議長は強調した。その後の取材で「もっと潔く自身の誤りを認めるべきではないのか」とまでくぎを刺した。

 ▽「職員にも権利」

 今回の湯崎知事の発言について、前鳥取県知事で早稲田大大学院の片山善博教授(地方自治論)は「国が制度を決めた以上、職員一人一人に権利があり、理解しがたい。収入の変動に関係なく10万円を出す国の政策は確かにおかしいが、知事としてできるのは制度設計に厳しく意見することだ」と指摘する。

 広島県は今後、湯崎知事が財源確保策として検討するとした「県職員への協力要請」の具体化を急ぐ。庁内では湯崎知事が「選択肢として排除しない」とした給与カットについて、実施した場合の財政シミュレーションも水面下で進む。

 県職員連合労働組合の大瀬戸啓介中央執行委員長は「今はまさに、職員が一丸となって新型コロナ対策に取り組んでいる局面だ。職員の納得がなければ何事も前には進まない。リーダーとして丁寧に合意形成を尽くす謙虚な姿勢を忘れないでほしい」と求めた。(樋口浩二、田中美千子、宮野史康) 

 知事の発言要旨はこちら

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