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がんで余命半年の工芸士、しびれる手で「宮島彫」の新作展

2021/4/26 20:02
ネコを彫り込んだ新作を手に、展示会への来場を呼び掛ける広川さん

ネコを彫り込んだ新作を手に、展示会への来場を呼び掛ける広川さん

 世界遺産の島・宮島(廿日市市)の伝統工芸「宮島彫(ぼり)」のただ1人の伝統工芸士広川和男さん(77)が、ネコをテーマにした新シリーズを制作した。患っている膵臓がんが悪化する中、「宮島彫を次世代に引き継ぐ」と決意して腕をふるった作品。29日から宮島で展示会を開く。

 木製の皿や盆に多彩な表情のネコを精緻に彫った約200点。ネコはいずれも、物思いにふけったり、怒ったりと豊かな表情を浮かべている。人気漫画「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」をイメージした、法被を着て刀を持つネコを彫った作品もある。

 広川さんは3月、膵臓がんが悪化し余命半年と告げられた。「最後にこれまでなかったものを作りたい」と抗がん剤の影響で手足にしびれが残る中、彫刻刀を握った。宮島彫は厳島神社の大鳥居や鹿などのモチーフが大半だが、新たなイメージを打ち出したいと擬人化したネコを題材に選んだ。

 こだわったのはネコの表情の造形。新型コロナウイルス禍で遠くに住むパートナーに会えなかったり、相次ぐ災害に憤ったり…。今の時代を反映したそれぞれのネコのストーリーを想像して作り込んだ。「これが最後の大仕事と思い、これまでの工芸士人生の全てをぶつけたつもり」と力を込める。

 現在、2人の弟子がいるものの、伝統工芸士に認定されているのは広川さん1人。「人の目に触れないと技は継承できない。宮島彫の魅力を知ってほしい」。来島者が少ない状況が続くが、多くの人に見てもらいたいと願っている。

 29日からの展示会は宮島の広川さんの工房「工房ひろ川」で開き、販売もする。5月31日まで。火、金曜休み。(木下順平)

 <クリック>宮島彫 江戸時代末期に山梨県の彫刻師が宮島へ伝えたとされる。トチやサクラなど堅い木材の盆や器に、絵画のような彫刻を施す。立体的に浮き上がらせる「浮かし彫り」、木地を削り込む「沈め彫り」、線を引くように描く「筋彫り」の大きく三つの技法がある。1982年に国の伝統的工芸品の指定を受けた。


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  • ネコの多彩な表情を彫った作品が並ぶ工房
  • ネコの多彩な表情を彫った作品が並ぶ工房
  • 新作を紹介する広川さん
  • 刀を持つネコを彫った皿

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