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表情隠すマスク、聴覚障害者の壁 意思疎通妨げに(2020年5月8日掲載)

2020/5/8 22:40
タブレット端末を使って手話でやりとりし、聴覚障害者の相談を取り次ぐ電話リレーサービス(広島市南区の広島県聴覚障害者センター)

タブレット端末を使って手話でやりとりし、聴覚障害者の相談を取り次ぐ電話リレーサービス(広島市南区の広島県聴覚障害者センター)

 新型コロナウイルスの感染拡大で、聴覚障害のある人たちがコミュニケーションの壁に直面している。相手の口の動きや表情を覆い隠すマスクは、意思の疎通を妨げてしまう。外出自粛が続き、自治体などへの相談や問い合わせの連絡手段に困る人も少なくない。広島県聴覚障害者センター(広島市南区)では、職員が代わりに電話をかける「電話リレーサービス」の利用が急増している。

 「口元が見えたら相手の言葉をより理解できる。でも今、『マスクを外してほしい』と頼みにくい」。広島市安芸区の女性(59)は不安な表情を浮かべる。幼い頃の交通事故が原因で耳が聞こえなくなった。

 聴覚障害は外見から周りの人に分かりづらい。スーパーのレジや駅などのカウンターで、「私は聴(き)こえません」と記したカードを差し出して筆談を依頼する。「手話のできる人は限られている。筆談で応じてくれる人がもっと増えるとありがたい」と願う。

 中区の男性(69)は生まれてすぐ、高熱で聴覚を失った。気をもむのは、自分がウイルス関連の情報を正確に把握できているかどうか。「テレビのニュースの字幕が増えたけど、手話がないと理解が追い付かないことがある」。国の支援策などについて詳しく知りたくても「私たちは電話をかけて確認することができない」と打ち明ける。

 こうした中、広島県聴覚障害者センターでは「電話リレーサービス」の利用が相次いでいる。聴覚障害のある人がインターネット電話「スカイプ」などでセンターに連絡する。職員がタブレット端末の画面を介して手話で相談に応じ、電話で関係先に問い合わせて回答を伝える仕組みだ。

 これまで利用は年に20件前後だったが、今年1月以降は約150件に上っている。マスクや消毒液の薬局への入荷状況、自治体への書類申請の手続き、雇用の相談…。ホテルの宿泊キャンセルのやりとりを代行したケースもあった。

 聴覚障害者からは、手話通訳士たちが仲介して、テレビ電話で病院を受診できるシステムの普及を望む声も上がる。自治体のカウンターなどで、担当者の口元が見えるプラスチック素材の「透明マスク」の着用が進めば意思疎通もしやすくなる。センター職員で手話通訳士の鈴木英子さん(56)は「聴覚障害者はマスクがあるとコミュニケーションしにくいことを知ってもらい、できる手助けをお願いしたい」と話している。(林淳一郎) 

 関連記事「透明マスク、口元見て会話 広島の団体、試作に励む」


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  • 聴覚障害のある人が筆談を依頼するときに差し出すカード

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