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フォロワー1万人、達成できねば引退 コロナで崖っぷちの山口県出身バンド【動画】

2021/5/6 0:00
フォロワー1万人獲得を目指すYuma(左から2人目)、Yasu(右端)たち「1―SHINE」のメンバー

フォロワー1万人獲得を目指すYuma(左から2人目)、Yasu(右端)たち「1―SHINE」のメンバー

 国内で新型コロナウイルス感染が確認されてから1年3カ月余り。音楽業界では、「3密」を回避しづらいライブやファンとの交流イベントの中止が相次ぎ、志半ばで引退していく若者たちが後を絶たない。感染「第4波」が襲来し、ますます先行きが見通せなくなったいま、東京を活動拠点とする山口県出身ロックバンドのメンバー5人が、ある賭けに打って出た。動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)で1万人のフォロワーを獲得できなかったら、夢を諦めて解散します―」と。

 ▼5人は同級生

 背水の陣で臨むのは、山口県の周南市や光市出身の男性5人でつくる「1―SHINE(イシン)」だ。メンバーは中学や高校時代からの同級生。2012年8月に結成し、主にライブハウスで下積みを重ねた。

 18年8月には2枚目のミニアルバムが渋谷のタワーレコードのデーリー総合チャートで2位を獲得。その時の1位は欅坂46、3位は乃木坂46。人気絶頂の「坂道グループ」に割って入る実力派バンドとして知名度はぐんぐん上昇し、ライブハウスは満席に。メンバーの誰もがそのままスターダムにのし上がる未来図を描いていた。

 バンド名は、明治新政府の一翼を担った長州藩士にあやかった「維新」と「一番に輝く」の二つの意味に由来する。ボーカルのYuma(28)の音域の広さが魅力で、エレクトロニックサウンドにラップを交えた個性的なスタイルが若者のハートに刺さり、ビルボードジャパンでも注目を集めるようになった。

 ▼ライブ断念、一念発起

 しかし、その夢はコロナ禍によって打ち砕かれた。ライブは20年2月を最後に中断。その後は12週連続で新曲を発表したり、古里・山口でテレビ局の情報番組に出演したりとアピールに奔走したが、5人の努力は「第2波」、そして続く「第3波」にのみこまれた。「まずい。このまま終わってしまうんじゃないか…」。メンバーの誰一人として口にこそ出さないものの、解散を意識し始めるようになった。

 30歳に迫る年齢への意識も、焦りに拍車をかけた。古里の同級生たちは仕事が軌道に乗り、結婚の報告も入り始めた。一方の自分たちはというと、音楽と掛け持ちでアルバイトで生活を切り盛りしている。コロナ禍で生計の不安定さは増すばかりだ。全員で話し合い、現状を打破するため、バンドの解散を賭けた勝負に出ることを決めた。

 ▼バンドユーチューバーの先駆けに

 1万人を集める媒体に選んだのは、「ティックトック」だ。動画と音楽の両方を効率的に発信しやすい上、収益につながるユーチューブへ後に移行しやすいと踏んだ。コロナ禍で多くのタレントがユーチューバーとして活動の幅を広げる中、実はバンドマンはその流れに乗っていないという。「生のライブで勝負することにプライドを持っている人がほとんど」とリーダーのYasu(28)。「僕らがバンドユーチューバーの先駆けとなり、チャンスをつかむ」と力を込める。

 ▼期限は6月末

 5人は4月1日に公式ツイッターで、解散を賭けた勝負に打って出ることを告知した。その後は毎日、ティックトックに曲を配信し続けている。フォロワー1万人達成の期限は6月30日。期限を3カ月間とした理由について、Yasuは「この10年で思うように結果を出せなかったのは、到着点をきちんと見据えていなかったせいだと思う。期限を決め、負けたら潔く退く」と説明する。いたずらに引きずらないことで、ファンに対して誠意と本気度を示したかたちだ。

 同時に、初めてのフルアルバムを製作するため150万円の寄付を募るクラウドファンディング(CF)を始めた。協力者への返礼品リストには、CDのほか、7月に東京と山口で予定するライブのチケットを用意している。フォロワー1万人を達成できなければ、これを「解散ライブ」と位置付け、ミュージシャン人生と決別するという。

 5月5日現在、フォロワー数は5168人、CFは108万3500円。Yumaは「解散する気はさらさらない。今回のチャレンジを次へのステップアップにつなげる」と意気込んでいる。

 ▼「だめなら解散」は、このバンドも

 「達成できなければ解散」のチャレンジは1990年代後半にテレビのバラエティー番組で話題となった。代表的な例がバンド「Something ELse(サムシングエルス)」。6枚目のシングル「ラストチャンス」がオリコン初登場で20位以内に入らなかったら解散する、という破天荒な挑戦をクリアし、NHK紅白歌合戦への出場も果たした。1―SHINEも逆境をはね返してブレークするか、それとも音楽業界から姿を消すか。運命のカウントダウンは始まっている。(門脇正樹)

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