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【詳報・克行被告第56回公判】最終弁論<3>供述者の証言は検察の誘導に強く影響されている

2021/5/18 21:24

 (3)慣例を無視した県連会長の選出がされたこと

 平成30年4月、C代議士が県連会長職を退くことになったため、慣例によれば、県選出の国会議員の中ではC代議士に次いで当選回数が多かった被告人が県連会長に就任するのが順当であった。

 ところが、上記のとおり、既に平成28年4月の改選時期に被告人が県連会長就任の意向を示していたにもかかわらず、このときは、被告人の意向を全く聴き取ることすら行わないで、被告人よりも当選回数・在職年数ともに少ないB参議院議員が県連会長に選出されることとなった。

 被告人は、度重なる災害対応にどの政治家よりも迅速に対応するなどの尽力をしたり、地元からの陳情・要望にも破実に対応するなど地元のために一生懸命に尽くしており、また、若手の地方議員とも勉強会を開催したり、県議・市議らに対して夏冬には氷代、餅代として寄付をするなどして、自分の政治家としての理念を共有してもらえる仲間をつくろうと努力していたにもかかわらず、このように自身が県連会長に就任できないのは、県連や宏池会との関係が良くないこともあって、仲間となる国会議員、県議、市議らが少なく、県内政界において被告人を県連会長に推す勢力が少ないことが原因であると考えていた。このような被告人の見方が正鵠(せいこく)を得ていることは、岡崎が、「被告人が県連会長になってもおかしくないこと」、「県連会長に就任できなかったのは、県連の中での被告人の評判が影響していること」、「本来であれば年次で回して被告人が県連会長に就任するところをあえて順番を外されたこと」をはっきりと証言している(同人の前出証人尋問調書20頁)ことからも明らかである(そのほか、天満祥典、宮本新八、渡辺典子、豊島岩白も同旨の証言をしている。)。

 3 その後の広島県の政界における被告人の政治的状況について

 被告人は、かねて広島県内の政界において孤独感や疎外感を抱き、また、自身の政治的基盤が脆弱(ぜいじゃく)であることに危惧感や不安感をもっていたが、さらに、これまでの慣例を無視して、露骨に被告人を外した形で県連会長の選出がされたことは、被告人にとって衝撃的な出来事であり、これによって、それまでに抱いていた孤独感や疎外感をより一層強く感じるようになった。

 加えて、第4の3で述べたような案里の公認をめぐるいきさつにより、広島県連や宏池会との関係がさらに悪化し、今後は、その威光に従わざるを得ない県議や市議らの支援が受けられなくなり、場合によっては、三矢会の切り崩しさえも起こりかねず、次の衆院議員総選挙がこれまで以上に厳しくなると考えるようになった。

 なお、国会議員の後援会と県議・市議らの後援会は、その幹部会員も含めて構成員が重複していることが多く、三矢会会員は、その多くが、安佐南区等を選出区とする県議・市議らの後援会の会員でもあった。そして、現実問題としては、地元に密着する県議・市議らが後援会員に及ぼす影響力の方が、国会議員のそれに比べて大きいことから、国会議員の後援会組織であっても、その支援の姿勢が県議・市議らの意向によって影響される面がある。

 第6本参議院選挙の公示日前の活動について

 1 政治活動と選挙・選挙運動との関係について

 政治家は、国や地元を良くしたい、国民の生命と財産を守りたいという目標を持ち、それを実現するための政策を進めるものであるが、その前提として、代議制民主主義の下では、選挙に当選して議員になることが不可欠であり、その意味で、政治活動と選挙とは不即不離の関係にあり、政治活動の延長線上に選挙があるといえる。また、政治家は全人格をもって政治活動を行っており、その一挙手一投足は有権者につぶさに見られており、全ての行動は選挙、投票に結びつくものと思われることから、理屈はともかく、選挙と切り離された政治活動というものは存在しえない。その意味で、後記2で触れるが、政治活動についても、「最終的には」などという修飾を付して、「選挙のため」とか「票を得るため」という評価をすることを全面的に否定するものではない。

 一方で、政治家は日頃の政治活動を行う上で、常に選挙、あるいは票というものを意識して、選挙のために政治活動を行っているという見方は、あまりに短絡的かつ皮相的に過ぎるものであり、国民の生命と財産を守るために日夜粉骨砕身している政治家に対する

洗と言わざるを得ない。

 そもそも、公選法は、政治活動と選挙運動とを明確に区別した上で、政治活動の自由の保障と自由かつ公正な選挙の確保という法所定の目的を踏まえて、それぞれについて適正な規律をしているのである。とりわけ、政治活動の自由は憲法上保障される権利であることから最大限尊重され、公示日まではいかなる制約も受けることはないし、確認団体である政治団体(自民党は確認団体である。)は、一定の条件は付されているものの、公示日後であっても政治活動を行うことができる。党勢拡大や地盤培養といった活動は、政党を問わず、日頃から、政党活動として全国各地で行われていることであり、正に、政治活動の自由に含まれるものである。そうした前提の下、本件においては、公示日前までに行われたもろもろの活動について、政治活動ではなく選挙運動に該当するか否かが重要な法的な争点になっており、被告人の行為を評価する重要な前提事実となっているのであるから、一つ一つの活動について、法が許容している内容や政党支部活動の実情等に照らして、緻密に事実認定・評価を行うべきである。にもかかわらず、検察官は、「最終的には」などというあいまい極まりなく、およそ法的なものとは言えない修飾を付することによって、極めて安直に、政治活動と選挙運動を混然一体のものと見なし、あたかも政治活動が全て選挙運動であるかのような法的評価を行っている。これは、本来許容されている政治活動に対する不当な評価・制約となるものであって、断じて許されるものではない。

 2 本参議院選挙の公示日前の活動に関する関係者の証言・供述について

 本参議院選挙の公示日前における被告人らの活動に関する関係者の証言・供述については、本来自由に行うことが許されている公示日前の政治活動がすべからく選挙運動に該当するという検察官の誤った評価に大きく影響されたものと考えられるものが多く、その信用性はおよそ認められないというべきである。

 検察官は、公訴事実に、公示日前に設置された案里の事務所について、「選挙事務所」と表記しているが、公選法上、選挙事務所は公示日後に設置・届け出が可能となるものである(同法130条)。公示日前の事務所はあくまでも政治活動のための事務所であるのであって、公訴事実においてすら、このような誤った理解に基づく記載をしていることからしても、検察官が政治活動および選挙運動の全般について正確な理解をしていない、あるいは、理解しようとしていないことが自明となっている。

 さらに、検察官は、公判審理の中で、被告人が、再三にわたって政治活動と選挙運動との関係について指摘したにもかかわらず、論告において、本来、党勢拡大活動や地盤培養活動に該当するものについてまで、被告人の主張に一切耳を傾けることなく、相も変わらず一刀両断に選挙運動であると決めつけているのであり、関係者の証言や供述

もこのような検察官の誤った認識・独善的な思考によって、不当に影響されているものとしか考えられない。

 この点は、本件の罪体の認定にも影響し、また、被告人の犯意にも密接に関するものであることから、第8(罪体に関する主張)および第9(情状)に先立って論じることとする。
(ここまで 3145文字/記事全文 7006文字)

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