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【詳報・克行被告第56回公判】最終弁論<11>証言は検察官に迎合してなされた

2021/5/19 2:37

 「選挙の手伝い」という言葉が録取されていない旨を指摘されるや、「そんなことはないと思いますけど。」と曖昧な証言になり、さらに、「呉の地元固めをお願いできないか」と案里から言われたのではないかと問われると、「はい、それもあります。」との証言をするに至り、そのやりとりを主尋問で答えなかった理由については、「それは、使わなくても、そういう意味は分かってらっしゃると思いましたので。」と不合理な説明をしている(同証人尋問調書24頁以下)。

 さらに、公判廷では、呉の連絡所ではボランティアとして無償で勤務するという話をFにした旨の証言をしたが(同証人尋問調書10頁)、検面調書にはそのくだりが一切録取されていない(同証人尋問調書28頁参照)。呉事務所スタッフは、捜査段階で検察官にその旨の供述を何回もした旨証言したが、そのような重要な事実を供述されながら、検察官が検面調書に録取しないことなど考えられず、また、当初は月額40万円の支給を提示されていながら、非常勤になったことだけで、無償になること自体不自然であるし、実際、本参議院選挙の後には、Fから20万円(なお、この金額についても、捜査段階では、「数十万円」という不自然極まりない供述をしている。)を受領している(同証人尋問調書29頁以下)。さらに言えば、呉事務所スタッフは、その20万円について、公判廷では、本参議院選挙後の付き合いを依頼するものとして交付されたと証言したが(同証人尋問調書30頁)、具体的な依頼事項もないままに20万円もの現金があらかじめ交付されることは明らかに不自然である。また、呉事務所スタッフは、Fから交付された現金について、捜査段階では、「私が呉事務所で選挙運動を頑張るなどして、案里さんが参議院選で当選を果たすのに貢献したことに対するお礼や報酬の意味合いを持つものだと思いました。」と述べていたのであり(同証人尋問調書32頁参照)、その変遷について問われると、「最初はそういうふうに思ったことはありましたけど、持ってこられたときに、そういうお話じゃなくて、これからもよろしく、私とのそういう関係を続けていきたいという意味のことだと思いました。」と支離滅裂な答えをしている(同証人尋問調書31頁以下)。

 このように、呉事務所スタッフの公判廷における証言は、検察官に迎合してなされたものと認められ、全体として信用性に乏しいのであって、被告人が明確に「参議院選挙」という言葉を用いていないことを供述していることに鑑みても、呉事務所スタッフ証言によって被告人が本参議院選挙における案里の支援を依頼したとの認定をすることはできないものと思量する。

5 福山事務所の責任者男性に対する供与の趣旨について

(1) 被告人は、福山事務所の責任者男性の党勢拡大活動等への謝礼や経費の補填(ほてん)のために現金を供与したものであること

 被告人が、6月8日及び7月15日に福山事務所の責任者男性に対し、それぞれ30万円を供与した事実は認めるが、これは案里の当選を得しめる目的で供与したものではない。

 被告人は、会社経営者という立場にありながら、福山事務所の責任者男性が福山地域での党勢拡大活動や案里の地盤培養活動を熱心に行ってくれており、そのための労力や経費も相当なものとなっていると考えていたことから、その謝礼や経費の補填をするために現金を供与したものである(第72回公判における被告人供述調書12頁)。

 このことは、6月8日に被告人が福山事務所の責任者男性に現金を供与した際に、「苦労をかけるね。」と話し、また、総理秘書団の引き回しの段取り等について褒める言葉をかけたこと(第64回公判における同人の証人尋問調書14頁)、7月15日に現金を供与した際に、「経費だから。」と話したこと(同証人尋問調書32頁)とも符合するものであり、被告人が発した言葉からも、党勢拡大活動等に対する謝礼や経費の補填を目的とした現金供与であったことが強く推認されるものである。

(2) 福山事務所の責任者男性との関係について

 被告人と案里は、かねてから懇意にし、被告人らの結婚披露宴の際には仲人の代役までしてくれたことのあるW参議院議員に案里が公認されたことの報告をした際に、県東部の福山地域にはこれまでほとんど縁がなく、実里を支持してくれる地盤もないことを伝えたところ、W参議院議員から、以前、同人の秘書をしており、現在は福山市内でX社を経営している福山事務所の責任者男性を紹介された。被告人は、W参議院議員と福山事務所の責任者男性との関係からすれば、福山事務所の責任者男性は、W参議院議員の指示に従って、当然、案里のために選挙を熱心に手伝ってくれるものと考えており、福山事務所の責任者男性に対して案里の陣営の内部の人という親近感を抱いており(同被告人供述調書13頁)、現金を供与して案里の当選を得しめるための選挙運動をしてもらおうという考えをもつことは一切なかった。

(3) 福山事務所の責任者男性がした活動と生じた費用について

ア 安倍総裁秘書の引き回し

本参議院選挙に向けては、自民党の党勢拡大の目的で、安倍総裁(当時)の地元秘書(以下「安倍総裁秘書」という。)が広島入りし、県内の企業や各種団体を回って、自民党への支持を訴える党勢拡大活動や、公認されたA氏及び案里の地盤培養のための活動を精力的に行った。福山地域では、6月4日から6日までの3日間、同月11日から13日までの3日間の2回にわたって、安倍総裁秘書による企業・各種団体回りが行われたが、その際には、福山事務所の責任者男性が中心となって、安倍総裁秘書の企業・各種団体への案内と紹介(以下「秘書団引き回し」という。)をした。

 福山事務所の責任者男性は、秘書団引き回しに当たって、1回目には、5名の安倍総裁秘書がそれぞれ乗車する車を手配したり、自らも運転して同行したほか、X社の従業員などから運転手を手配し、2回目にも、1名の安倍総裁秘書が乗車する車を手配したり、運転手を手配するなどした。

 被告人は、福山事務所の運営についてはFに任せきりにしていたことから、福山事務所の責任者男性による車や運転手の手配について、実際にどれくらいの経費が掛かっているかは承知していなかったものの、数日間の終日にわたって、複数の運転手や車の手配をしたことで相応の費用が掛かっていると思っており、また、福山事務所の責任者男性自身も、X社の業務を離れて引き回しのロジなどをすることに多大な手間をかけていると認識していた。

イ 福山事務所の物件探し

 参議院選挙においては、同一の選挙区内に2つの選挙事務所を設けることが認められているところ、広島県においては、広島市のほか、県東部の中核都市である福山市に選挙事務所を置くことが一般であった。案里についても、同様に、福山市内に選挙事務所を置くこととしたが、被告人らは同地域にそれまでに深い縁がなかったことから、6月8日に同市内の料理屋で会合した際に同席したH元広島県議およびI元広島県議の勧めもあって、事務所の物件探しを福山事務所の責任者男性に依頼することとなった。

 被告人は、福山事務所の責任者男性から、案里の選挙事務所というと貸してくれるところがなく、結局、選挙事務所にはあまり適さない、2階にある物件しか借りることができなかったという苦労話を聞かされていた。

 ウ 福山事務所スタッフの手配と福山事務所の責任者男性自身の常駐

 福山事務所の責任者男性は、公判廷において、実姉、地元の後輩・知人、X社の従業員などを福山事務所のスタッフとして手配したほか、福山事務所の責任者男性自身も、基本的に福山事務所に詰めていた旨の証言をしているところ、被告人は、福山事務所の責任者男性が費やしたであろう多大な手間や経費に報いる必要があるとも考えていた。
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