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【詳報・克行被告第56回公判】最終弁論<12>政界での影響力・実力目安に金額

2021/5/19 2:39

エ 検察官の主張について

 検察官が、論告において、被告人が現金を供与した相手方がa後援会員であることの論拠として挙げる点はいずれも失当である。

 まず、a後援会員のジャケットに現金を入れた態様がY県議宛の現金を預ける態様として考え難いとする点については、被告人との関係を知るY県議の支援者が詰めかけている狭隘な場でY県議宛の陣中見舞いを渡すことによって被告人が卑屈になっているとみられることを嫌ったとする当時の被告人の心情からすれば、Y県議の支持者などに知られない態様で陣中見舞いを託すことも何ら不自然なものではない。

 また、検察官は、被告人がa後援会員に対し、「とっとけや。」と申し向けて現金を供与し、また、返金を拒否したとするが、被告人が年長者であるa後援会員に対し、そのような広島弁での言葉遣いをするはずがなく、また、他の受供与者の供述や証言でもそのような言葉遣いを被告人がしたことは認められないことからしても、a後援会員の同供述の信用性には大いに疑問が残る。

 さらに、被告人が過去の衆議院選の際にもa後援会員に現金を渡したことがあり、a後援会員が三矢会の役員であることを根拠とするが、そのような事実があったとしても、a後援会員にだけ30万円という金額を供与する理由にはならないのであって、検察官の主張は、不都合な部分を殊更に無視するものであって、到底まともな主張とは考えられない。

 検察官は、当初はY県議に買収のための現金を供与する意図であったとするが、これは、被告人が公判廷で供述するように、Y県議との関係からすれば、直接に供与しようとしても絶対に受け取ってくれないという被告人とY県議との関係を全く度外視した空論であって、全く説得力のないものである。

 検察官は、リストに「a後援会員 30」という記載があることを指摘するが、被告人は、これを記入した時点における現金の在りかという意味で記載したものであり(第76回公判における被告人供述調書48頁)、この記載をもって被告人がa後援会員に現金を供与したとする根拠とすることはできない。

また、検察官は、その主張する内容との整合性を合理的に説明できないためにあえて言及していないものと思われるが、検察官が被告人と案里のいずれが現金の供与者となるかを被告人が検討した過程を記載したものとするリストのY県議の該当箇所には、「a後援会員」という文字が記載されているのであり、被告人が当初からa後援会員を通じてY県議に陣中見舞いを渡すことを考えていたとする説明(同被告人供述調書47頁以下)と客観的に符合するものであるばかりか、a後援会員に供与したとすると到底合理的な説明がつかない記載となっているものである(同じく関係が悪かったP市議についても、後援会長の名前が記載されている。これは、P市議に陣中見舞い等を渡すとすれば、同後援会長を通じて渡すことになると被告人が考えていたことを示すものである。)。このような検察官の主張に沿わない客観的証拠については、その合理的な説明をしようともせずに、ただ、被告人の主張を虚偽と決めつける検察官の姿勢については、心底あきれるばかりである。

(2) b後援会員に対する供与について

ア b後援会員に現金を渡した事情について

 被告人は、b後援会員を通じて、同人が後援会長を務めるZ市議に対し、統一地方選挙の当選祝いとして30万円を供与する意図であった。

 被告人がZ市議に対する当選祝いをb後援会員に渡したのは、以下に述べる事情があったためであった。

 Z市議は、元々は自民党の衆院議員であったaの支持者であったが、同人が平成21年に政界を引退してからは、被告人の応援をしてくれるようになり、以来、被告人はZ市議と良好な関係をもっていた。被告人は、Z市議に対し、例年、氷代、餅代を渡していたが、その際も、高齢であるにも関わらず自ら運転して被告人の事務所まで来てくれ、笑顔を見せながらこれを受け取ってくれていた。

 被告人は、Z市議の体調が悪いと聞いており、統一地方選挙も厳しかったにもかかわらず、当選することができたことを喜び、投開票日の4月8日、Z市議の選挙事務所を訪問して当選祝いを渡しに行った。ところが、Z市議は、「あんたが選挙中やったことを覚えとるのか。こんなものは受け取れん。」と吐き捨てるように言い、まるで蠅を追い払うように手で振り払う仕草をしながら、受け取りを拒んだ。選挙事務所内には、Z市議の支持者であり、被告人の支持者でもある者も大勢おり、被告人としては、Z市議が立腹している理由が分からず、そのようにけんもほろろの対応をされたことに戸惑う状態だった(同被告人供述調書67頁以下)。

 被告人は、Z市議が何か誤解しているのであれば、b後援会員を通じて当選祝いを渡すことによって、誤解を解いていただこうと考えた(同被告人供述調書70頁)。

イ b後援会員に現金を渡した状況等について

 被告人は、b後援会員方を訪問し、その庭先で、b後援会員と会い、Z市議の当選を祝う言葉を述べ、さらに、「4票差でぎりぎりだったけど、本当によかったですよ。共産党に負けなくてよかったですよ。」、「b後援会員会長さんのおかげで当選されたってみんな言ってますよ。」などと後援会長であるb後援会員をたたえた上で(そのようなやり取りが被告人との間でなされたことはb後援会員も認めている。)、「当選祝いです。Z先生にお渡ししてください。」と伝えて当選祝いを入れた封筒をb後援会員に手渡した(同被告人供述調書71頁)。このように、統一地方選挙の投開票日の翌日に、Z市議の当選のお祝いの言葉をその後援会長に伝えた上で、当選祝いを託すということは自然な流れであり、そのような客観的な状況下で、差し出された現金を自己に対して供与されたものとするb後援会員の供述は不自然極まりない。

 b後援会員は、捜査段階において、検察官に対し、被告人から、「これは気持ちじゃけえ。いろいろと経費がかかったと思いますから。」と言われたこと、また、被告人に対し、「経費はかかっていますけど、自分持ちじゃけえ。あなたからもらうべきものじゃないけえ。」などと言った旨の供述をしているが(甲6号証8頁、10頁)、被告人がb後援会員に対して当選祝いである旨を明言したのであるから、そのようなやりとりがなされるはずがない。

 また、後に、b後援会員はて市議に被告人から託された当選祝い入りの封筒を持参しているのであり、このことからも、b後援会員がその現金がZ宛のものであるという認識を抱いていたことは明らかである。b後援会員は、被告人から渡された現金の処理について相談するために第三者であるこのところに持参したと供述するが、自己に供与されたものであり、また、それが選挙違反となるものであるという認識を有していたb後援会員がそのような行動に出ること自体不自然であり、b後援会員の同供述は信用できるものではない。

ウ 返金を申し出られた状況について
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