地域ニュース

【詳報・克行被告第56回公判】最終弁論<18>組織固めの絶好の機会

2021/5/19 3:05

 A 党勢拡大活動や地盤培養活動に対する動機付け

 被告人が三矢会会員に現金を供与した目的としては、まず、総体的なものとして、これらの者に案里を前面に出した党勢拡大活動や案里の地盤培養活動をしてもらうための動機付けであり、それらの活動に要する費用を補填するためであることが挙げられる。すなわち、三矢会会員は、自民党の支持者でもあったことから、被告人は、三矢会会員を通じた党勢拡大活動を行おうと考えていたし、第6の4(3) ウで述べたように、案里の地盤培養活動を三矢会に担ってもらうことを期待していたことから、三矢会会員に対し、2連ポスターや室内用ポスター、自由民主号外の配布、後援会入会申込書の配布と記入、選挙はがきの記入などを依頼し、また、各種集会の開催と動員などを依頼したものであるが、そのような活動のために手間暇をかけることに報いるための報酬や交通費や通信費などの経費を補填しようとしたものである。

 これらの活動についての三矢会会員の証言をみると、例えば、f後援会員が、「(河井あんり後援会結成の集いにおける挨拶について)中には案里さんのことをよく御存じない方もおられるんで、私が知ってる範囲ですけど、案里さんの人柄とかを紹介して、当然、最後には、どうか案里さんをよろしゅうお願いしますということを申し述べたように思います。」と証言し(同人の証人尋問調書20頁)、g後援会員が、「(被告人から渡されたポスターなどについて)より多くの人に案里さんの存在を知ってもらうということ」、「それは、知ってもらわなきゃ、まず、頼めないじゃないですか。」と証言しているように(第 53 回公判における同人の証人尋問調書 10頁)、その活動の実質は案里の地盤培養活動そのものであったことが明らかとなっており、被告人の認識と符合している。

 そして、被告人から供与された現金についても、築根は、「いろいろ動くに当たって、私も仕事は休まんといけんし、いろいろ人の気持ちの中に取り込んで入っていかんといけんし、こそっと少しは報酬的なものをもらってもいいんじゃないかという、まあ、嫌らしい気持ちも多少あったのは確かです。」と証言した(同人の証人尋問調書 15頁)上で、弁護人からの「検察官の取調べの中で、いろいろ動いてもらう謝礼というか、御足労願うので、いろいろ経費的なことも要るだろうし、そういった謝礼として出されたんだろうと思いました。ということをお述べになっているんだけれども、経費的なことというのも頭に浮かんだんじゃないんですか。」との質問に対し、「当然、掛かっているお金という意味で経費という言葉が出たのかも分かりません」と証言しているのであり(同証人尋問調書 31 頁)、この認識も被告人の認識と符合するものである。さらに、h後援会員は、2連ポスターを掲示するための掲示板を製作するベニヤ版などの購入費用に被告人から供与された現金を使っていることを供述している(甲67号証19頁)。

 また、i後援会員は、「私は、案里さんの選挙運動をするに当たって、多少なりとも手出しで私の現金を使うこともあるかもしれないとも思いました。」と供述している(甲21号証13頁)。ここでi後援会員がいう「選挙運動」とは、この時期に行っていた2連ポスターの貼付、室内用ポスターや後援会入会申込書の配布などを指している(同12頁、15頁)のであるから、正しくは、党勢拡大活動や地盤培養活動のことをいうものと理解すべきであるが、i後援会員は、そのような活動のための経費を支出することがあり、その補填の趣旨での現金という理解をしていることに注意すべきである(j後援会員も同運者の供述をしている(甲52号証11頁)。)。

 i後援会員に限らず、三矢会会員の供述調書では、2連ポスターや自由民主号外などの配布、後援会入会申込書の配布などについて、押しなべて、「選挙運動」、「選挙のための活動」とされているが、当然のことながら、三矢会会員は被告人の選挙の際にも、同様の活動を行ってきていながら、それが選挙運動と指摘されたことはないのであるし、既に述べたとおり、この評価は党勢拡大活動や地盤培養活動の意義を理解していない誤ったものであって、検察官の不当な誘導ないし示唆によって影響された供述であることを指摘しておく。

 B 三矢会切り崩しへの防禦

 被告人は、広島県連との関係がより険悪なものとなることが予想されたために、広島県連やその意を受けた県議らによって三矢会の切り崩しが行われてしまい、被告人の政治基盤が弱体化し、衆議院選挙が大変に難しい状況になってしまうのではないかと畏れていた。

 そのため、被告人は、次の総選挙に向けて結束を固めたい、三矢会会員が被告人に対してどのような気持ちでいるのかを、いわば「点検」しておきたいという気持ちを抱いていたが、何もないときに現金を渡すことはできないので、案里の参議院選挙に向かうこの時期がそのような組織固めや点検に絶好の機会と考え、この機会に三矢会内の結束を固め、また三矢会会員の気持ちをつなぎとめておきたいという思いから、現金を渡したものである。

 検察官は、論告において、現金供与当時に目前に迫っていたのは被告人の衆議院議員選挙ではなく本件選挙であったこと、被告人が三矢会メンバーらに現金を供与した際に自己の広報誌の配布や自己の活動状況の報告は一切行っていないことを挙げて、被告人の主張が荒唐無稽であるとする。

 このうち、後者の指摘については、日頃から様子を見聞きしている三矢会会員に改めて月刊河井克行を配布したり、わざわざ活動状況を報告する必要などないのであるから、検察官が何を言わんとするのか全く了解不能であって、およそ反論にも値しない指摘であるが、前者の指摘についても、いつ何時、解散総選挙があるか分からない衆議院議員選挙の現実も理解せず、単に形式的な事実を指摘しているだけのものであって、全く失当である。

 C 案里への票を増やそうという意欲が薄かったこと

 もとより、被告人において、三矢会会員に現金を供与した際、案里の当選も得たいという気持ちがあったことは否定できないが、他方で、三矢会会員は、被告人の支持者であり、三矢会の結成や活動には以前から案里も深くかかわっていたことから、現金を渡さずとも案里を応援・支持してくれる人たちであるという認識でいたし、むしろ、被告人としては、上記i及びAで述べた思いや、以下に述べる個々の三矢会会員との関係による理由を強く意識していたことから、現金を供与することによって案里への票を増やそうという意欲は極めて薄かったものである。

 イ 団体支持の取りつけ

 三矢会会員の中には、地域の職能団体に影響力を持つ者がいるところ、被告人は、そのような会員を通じて、職能団体に有力な支援をするよう取り持ってもらうことができれば、被告人の支持基盤が強固なものになると考えた。

 具体的に、そのようなことを考えて現金を供与した三矢会会員には、f後援会員、k後援会員がいた。

 このうち、f後援会員は、大工、左官、小規模工務店が加盟するeの地区長などを務め、f組合副理事長もしていたことから、県内各地に知人が多く、また、三矢会の活動にも積極的に協力してくれていた。そのため、被告人は、その支部会合にできる限り積極的に出席したり、eを支援する自民党の議員連盟が結成された際には、これに参加し、国民健康保険の国庫補助獲得に努力したりするなどした。

 被告人は、f後援会員に全県組織である関係者に被告人や案里の支援を呼び掛けてもらいたいという思いで、現金を供与したが、そのためには当然、ガソリン代や高速代などもかかるだろうと思ったことから、その経費的な面も含めて、「ガソリン代にしてください。」という言い方をして現金を渡したのである。

 また、k後援会員は、g会の女性部長を長く経験し、県g会連合会女性部の役員も務めたことがあったことから、高陽地区と白木地区のg会の「顔」として、地域に強い影響力を持っていた。そのため、被告人は、各地のg会女性部長などに声をかけて、被告人や案里の地盤固めをしてもらうことを考えて、k後援会員に現金を供与した。

 実際、k後援会員は、公示日前に、2連ポスターの貼付、後援会入会申込書の配布、6月2日に開催された「飛翔のつどい」での乾杯の発声を行ったが、これらは、いずれも、党勢拡大活動や地盤培養活動に該当するものである。
(ここまで 3477文字/記事全文 8229文字)

会員限定の記事です
  • 無料登録して続きを読む
  • ログインする
  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

 あなたにおすすめの記事

アーカイブの最新記事
一覧