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宇都宮LRT開業、元広電役員けん引 路面電車人生41年、ダイヤ作りや運転士採用(2020年5月9日掲載)

2021/5/22 22:11
宇都宮市などが計画するLRTのイメージ図を前に「LRTを街の発展につなげたい」と話す中尾さん

宇都宮市などが計画するLRTのイメージ図を前に「LRTを街の発展につなげたい」と話す中尾さん

 宇都宮市などが計画する次世代型路面電車(LRT)の2022年3月開業に向け、広島電鉄(広島市中区)の元役員が運営会社で準備に奮闘している。中尾正俊さん(75)=東区出身。広電での41年間の経験を生かし、ダイヤ作りや運転士候補の採用を支える。「第二の故郷」で路面電車人生の集大成へと走り続ける。

 市や民間企業が出資する第三セクター、宇都宮ライトレール本社。中尾さんは常務運輸企画部長として、ブレーキと加速の場所や信号の待ち時間など、ダイヤに必要な約1万5千の条件の取りまとめを担う。

 LRTは従来の路面電車より床が低く、電停と段差がほとんどない。「乗り降りしやすく高齢社会に適している。お年寄りが外出すれば店が潤い、医療費が減る」と意義を説く。気の遠くなるようなダイヤ作りに「失敗は許されない」と厳しい姿勢で臨む。
 運転士の採用にもフル回転だ。「運転士は営業マン」が持論で、面接では笑顔を重視する。約70人を計画し、これまで入社した19人は広電や京福電気鉄道(京都市)に出向し運転免許を取る講習を受けている。

 馬嶋英昌経営企画課長は「路面電車の世界では神様みたいな人。長年の経験と人脈が役立っている。ある会社は『中尾常務のお願いなら』と講習を引き受けてくれた」と明かす。

 「路面電車は人生そのもの」と言う中尾さん。1967年に広電に入り、08年に常務を退くまで電車事業一筋で運行やLRT導入、運転士の養成所長と幅広い仕事に携わった。全国路面軌道連絡協議会の専務理事も務めた。

 経歴を見込まれ、15年夏に誘いを受けた。広島駅前のホテルで宇都宮市の佐藤栄一市長たちから「豊富な知見で事業を手伝ってほしい」と懇願された。既に70歳。戸惑う背中を押したのは妻玲子さん(73)だった。「路面電車の集大成として取り組んだら。あなたが運行管理者なら、私は健康管理者として一緒に参ります」。広電の椋田昌夫社長も支援を約束。同年11月、宇都宮ライトレールの設立と同時に入社した。

 最初は苦労の連続だった。5人の役職員のうち中尾さん以外は素人で「どうなるかと心細かった」。広電の応援を受け、設計段階で電気や信号、車両などの技術課題を少しずつ解決した。施設の整備で市とコンサルタント会社の協議も難航。中尾さんは若手中心の人材を拡充するよう市に求め、線路の整備方法を担当者に教えた。

 今後、講習から戻る運転士を育てる。開業後3年は毎日電車に乗って運転をチェックするつもりだ。「安全を徹底し、第二の故郷で市民が誇りに思う乗り物にする」。まだ先にある終点を見据える。(境信重)

 なかお・まさとし 近畿大理工学部卒。1967年広島電鉄入社。取締役電車部長などを経て2008年常務電車カンパニープレジデント退任。14年広島大大学院社会科学研究科マネジメント専攻修士課程修了。15年11月宇都宮ライトレールに取締役運輸企画部長として入社し、同年12月から常務運輸企画部長。

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