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観光客受け皿づくり進む 福山・鞆の浦「日本遺産」認定3年

2021/5/23 23:00
緊急事態宣言などで観光客が再び激減した鞆町の常夜灯周辺。いろは丸展示館(右)は休館し、標柱はしまわれている(21日)

緊急事態宣言などで観光客が再び激減した鞆町の常夜灯周辺。いろは丸展示館(右)は休館し、標柱はしまわれている(21日)

 福山市鞆町の近世の港湾施設や町並みが、文化庁の「日本遺産」に認定されて24日で3年となる。国の補助金を活用し、市などは観光ガイドの養成や情報発信の環境づくりなどを進めてきたが、昨年からの新型コロナウイルスの影響もあり、地元では成果をいまひとつ実感し切れない様相も広がる。コロナ禍で環境が激変していく中、地域ぐるみの取り組みが今後問われる。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」、国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に続く「3冠」だ―。日本遺産の認定を受けた2018年、町内はお祝いムードに沸いた。シンボルの常夜灯前で祝賀会も開かれた。

 認定地域は、国の補助金として3年間で計約7千万円を活用できる。鞆町では市と地域や文化財関係者でつくる協議会が、ガイド養成、ホームぺージ(HP)やPR動画の制作、鞆の食文化をテーマにしたイベントなどに取り組んだ。

 草の根の3団体に分かれていた観光ガイドは「しお待ちガイドの会」として組織化。養成講座には定員を上回る応募があり、定年後のデビューを目指す40、50代の予備軍も増えた。ガイド歴34年の宮本和香(かずこ)会長(71)は「後進に引き継ぐ仕組みができたのは大きい。ベテランも知識を深める意欲が高まった」と手応えを語る。

 HPのアクセスは累計約10万件。PR動画の一本は観光動画の賞を受けた。市が19年に首都圏住民を対象に実施したアンケートでの認知度も14・2%と17年から2・3ポイント上がった。

 一方、観光スポットの対潮楼がある福禅寺の山川龍舟住職(71)は「ガイド以外は、特に大きなことがないまま3年が過ぎたような印象」と振り返る。

 市は日本遺産の認定を得るため、当初検討した市全域での申請から急きょ鞆だけに切り替えた。その後、地域と認識をすり合わせるのに時間がかかった経緯がある。市文化振興課の内田実主幹は「入り口で事業を地域主導で進められなかったのは反省点」と認める。

 新型コロナの感染拡大で、成果はさらに見えにくくなった。20年のガイドの案内人数は例年の3分の1に。太田家住宅などの構成文化財16カ所に置かれた標柱は、施設の閉館で一部がしまい込まれている。

 観光鯛網(たいあみ)などの行事も2年続けて中止となった。鞆の浦観光情報センターの片岡明彦センター長(57)は「ブランクが長いと機運も下がる。経験を伝承する機会が失われかねない」と危惧する。

 一方、ハード事業が進む。重伝建などの家屋補修の相談窓口に加え、情報発信機能も持つ市の「町並み保存拠点施設」(仮称)は22年7月にオープン予定。鞆町内会連絡協議会の大浜憲司会長(73)は「鞆は人が住み続けて守られてきた。拠点施設を軸に、観光客も地域も満足できる取り組みを広げたい」と強調する。

 認定地域は4年目以降は補助金がなくなり、環境の維持や整備に「自走」も迫られる。コロナ禍の後を見据え、観光客の受け入れと担い手の確保に向けた土台の立て直しが求められる。(吉原健太郎)

 <クリック>日本遺産 国内外の観光客を地方に呼び込み、地域の活性化を図るのを目的に2015年に制度が創設された。市町村が地域の文化財群を歴史的な経緯や伝承を踏まえてストーリーにまとめ、文化庁に申請する。鞆町は「国内随一の近世港町」をテーマに申請し、18年5月に認定された。 


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