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【灯を消さない コロナ禍と文化】美術館、作品輸送に悩み 海外への貸し出し品戻らず・集まらぬ展示品…(2020年6月11日掲載)

2020/6/11 20:22
米セントルイス美術館に運ばれたミレー「刈り入れ」(2月、ひろしま美術館提供)

米セントルイス美術館に運ばれたミレー「刈り入れ」(2月、ひろしま美術館提供)

 新型コロナウイルスの影響で臨時休館していた広島県内のほとんどの美術館は再開したが、作品輸送の停滞が悩みの種になっている。海外へ貸し出した所蔵品が期限を過ぎても戻っていない。国内外から作品を集める展覧会についても日程の見直しを迫られている。今後の美術館や美術展の在り方にも影響を与えそうだ。

 ▽所蔵品、再評価の流れも

 5月18日に約2カ月ぶりに再開したひろしま美術館(広島市中区)。所蔵作品展に並ぶはずのミレー「刈り入れ」(1866〜67年)は不在となっている。

 昨年9月にオランダのファン・ゴッホ美術館に貸し出し、今年1月にはそのまま米セントルイス美術館へ渡った。セントルイス美術館はコロナの影響で3月に臨時休館に入り、今も再開できていない。5月までだった貸出期限は、今秋まで延びた。

 「美術展を下支えする物と人の移動が滞り、展覧会の根幹が揺らいだ」と古谷可由(よしゆき)学芸部長。美術作品の輸送は、学芸員が付き添うのが常だ。作品の傷の有無などをチェックする必要があるためだ。運搬の専門スタッフも大勢関わる。国をまたいだ移動に制限が掛かる現状では進めるのが困難という。

 5月12日に再開した広島県立美術館(中区)も、所蔵するダリの大作「ヴィーナスの夢」がドイツのアルプ美術館へ渡ったままだ。2〜5月に現地で展示後、遅くとも今月に返却の予定だったが、今夏まで延期になった。両作品とも、現地で安全に保管されており、作品そのものに問題はないという。古谷部長は「無理に動かさない方が安全」と指摘する。

 コロナ禍がもたらした作品輸送の停滞は、海外から作品を取り寄せる美術展にも影響している。ひろしま美術館は6月6日〜7月19日にフランスのランス美術館のコレクションを紹介する特別展を開くはずだったが、来年度以降に延期することを決めた。現地からの輸送のめどが立たないためだ。現在は「アニメ化30周年記念企画 ちびまる子ちゃん展」を7月5日まで延期して開いている。

 国内だけで作品をやりとりする展覧会も中止や延期が相次いでいる。広島市現代美術館(南区)は5月30日〜7月19日に開く予定だった、靉光らの戦時期の作品を紹介する特別展を中止した。現在開催中の「式場〓三郎:脳室反射鏡」展を7月26日まで延長している。

 三次市の奥田元宋・小由女美術館でも、丸木位里の画業をたどる特別展のスタートが4月から7月にずれ込んだ。埼玉県から出展作の半数以上を借り受ける予定が、緊急事態宣言などの影響で滞った。

 コロナ禍で作品輸送に伴うリスクがあらためて浮かび上がったことで、作品に掛ける保険料が値上がりする懸念が出ている。美術展のコストがかさみ、観賞料に響きかねない。一方で、密集を回避する「新しい生活様式」が定着すれば、会場がごった返すような集客は見込みにくい。

 広島県立美術館の福田浩子学芸課長は「遠方から著名な作品を借りる大規模な展覧会は、再考を迫られる可能性がある」とみる。「海外の美術館では従来、コレクションを生かした常設展が主軸。日本でも、所蔵品や地域の作品を見直す動きが高まるかもしれない」と話している。(福田彩乃)

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