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広島県教委の公立高入試改革素案 広島大高大接続・入学センター長の杉原敏彦教授【ずばり聞かせて】

2021/6/29 10:03
「生徒の多様性を評価できる入試制度を目指してほしい」と話す杉原教授

「生徒の多様性を評価できる入試制度を目指してほしい」と話す杉原教授

 広島県教委は9月13日、公立高入試改革の素案を示し、推薦入試廃止による入試期間の短縮や調査書(内申書)への「自己PR書」導入などを打ち出した。県教委は、2021年春に内申書の見直しの先行実施を想定するが、生徒や保護者には賛否の声が交錯する。元高校教諭で、入試制度に詳しい広島大高大接続・入学センター長の杉原敏彦教授(64)に素案の評価や今後の議論の在り方を聞いた。(奥田美奈子)

 ▽働き方と指導、調和を

 ―改革の狙いの一つは学校現場の負担軽減です。この素案での実現可能性をどうみますか。

 確かに入試期間は短縮されるが、逆に中学校の教諭の負担は増すだろう。素案では、受験生自らが書いた自己PR書を活用して全ての受験生に面接を課すとする。一人一人に沿った指導をするには、どうしても時間が必要だ。面接をする高校側の負担増も避けられない。

 ―推薦入試を廃止して一般入試に一本化する方針をどう評価しますか。

 一般入試に面接や自己PR書を持ち込むことで、教科学力以外の複数の「ものさし」で多面的に評価しようとの姿勢がうかがえる。ただ、評価の公正さを保つことは容易ではない。

 自己PR書作りは、生徒の深い学びにつながる可能性がある。自分の内面を見詰め、なぜその高校で学びたいかを考えるきっかけになるからだ。しかし、面接も含め、学校側の指導によって過度な対策が進むならば問題だ。試験官に心地よいフレーズを自己PR書に書き、面接で話すことが目的になれば、生徒の多様性を評価する本来の入試制度の趣旨に沿わない。

 ―内申書に記載する教科学習の記録(内申点)の対象期間も、現行の中学1〜3年から2、3年生の2年間に絞るとしています。

 違和感がある。内申書は本来、中学校での学習、活動の全体像を示すものだ。1年生の時の努力も含め、3年間の成長過程を評価すべきだ。

 ―県教委への注文を聞かせてください。

 入試の制度設計には「二律背反」が付きまとう。理念通り実行するほど学校現場の働き方改革に逆行してしまう。働き方改革に軸足を置けば新制度は形骸化する。そのバランスをどう取るか。適正に取れれば学校現場に時間的ゆとりが生まれ、教育上の効果が出る可能性がある。

 非常に大きな入試改革だ。県教委はその目的や課題について十分な質と量の情報を発信する必要がある。その上で学校現場や生徒、保護者、地域の意見を丁寧に聞き取り、新制度に反映させねばならない。

 ≪略歴≫慶応大卒。1979年から因島高(尾道市)教諭。広島県教委、広島大高等教育研究開発センター、観音高(広島市西区)校長などを経て2011年、広島大入学センター(現広島大高大接続・入学センター)長。同県世羅町出身。

 <クリック>広島県教委の公立高入試改革素案 現在の中学2年生が受験する2021年春から調査書(内申書)の内容を見直す。内申書の対象期間を1〜3年から2、3年に狭める。現在、中学校側がまとめている、スポーツや文化、生徒会など生徒の特色ある活動を記録する項目を削除。代わりに生徒自らが作成する「自己PR書」を導入する。現在の1年生が受験する22年春には推薦入試(選抜T)を廃止し、一般入試(選抜U)との統合を見込む。県教委は今月17日まで県民の意見を募り、年内をめどに改革案をまとめる。

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