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「黒い雨」線引き再び焦点 14日広島高裁判決、国の検討会に影響も

2021/7/12 23:25

 原爆投下後に降った放射性物質を含む「黒い雨」に国の援護対象区域外で遭い、健康被害が生じたと訴える広島県内の男女84人(うち14人は死亡)が被爆者健康手帳の交付を求めた訴訟の控訴審判決が14日、広島高裁で言い渡される。昨年7月の一審広島地裁判決は原告全員を被爆者と認定。今回も区域の線引きの妥当性が最大の焦点となる。高裁が黒い雨を浴びた人の被爆者認定の新たな考え方を示す可能性があり、判決は今後の被爆者援護行政や区域の再検証に向けた国の検討会に影響を与えそうだ。

 【表で確認】それぞれの主張と主な動き

 ■争点

 一審判決は黒い雨を巡る初の司法判断となった。黒い雨が援護対象区域より広範囲に降ったと認定。黒い雨を浴びたことと原告のがんや白内障の発症との関連が想定されるとし、原告全員を被爆者と認めて手帳の交付を命じた。

 訴訟に参加する国は、一審判決が「科学的知見が十分でない」として被告の県、広島市に控訴を要請。国に控訴断念を求めた県と市は、国が「区域拡大も視野に入れた検討をする」との意向を示したため控訴を受け入れた。

 控訴審は昨年11月に始まり、今年2月に結審。計2回の口頭弁論で、被告側は戦後の複数の調査を基に「原告が黒い雨を浴びるなどした場所に放射性降下物が降った科学的知見はない」とあらためて強調。黒い雨は火災のすすを含んだもので「原爆放射線の影響を認めることは困難」と判決の取り消しを訴えた。

 これに対し原告側は「原爆放射線の人体への影響は完全に解明されていない。被爆者援護法も黒い雨に放射性微粒子が含まれ、健康被害が生じる可能性があることを前提にしている」と反論。控訴を棄却するよう求めた。

 高裁は今回、原告が被爆者に該当するかどうかについて(1)原告がいた場所が黒い雨降雨域かどうか(2)黒い雨に放射性降下物が含まれていた可能性があったか(3)含まれていたとして健康被害を及ぼす可能性があったか―の3点で判断する方針を示した。

 国がこれまで、黒い雨を浴びた人の認定要件としてきた「がんや白内障など11疾病の発症」は含まれていない。この方針に沿うと、これらの病を発症していない人を被爆者と認定することも可能だ。認定の新たな枠組みとして示されれば、他の黒い雨被害者の援護にもつながる可能性がある。

 ■区域再検証の検討会

 厚生労働省は一審判決を受け、区域拡大を視野に入れた検討会を設置。放射線や医療、気象の専門家をメンバーに昨年11月以降、計5回開いた。

 検討会は、降雨域の土壌分析や、スーパーコンピューターによる原爆投下時のきのこ雲の広がり方のシミュレーションなど5項目を調査。会合では、区域外で黒い雨が降ったとの被爆体験記や証言ビデオが多数あるとの調査報告も示され、厚労省は「降雨地域の範囲を調べるために価値のある内容」とした。

 田村憲久厚労相は、今月中に検討会の議論を整理する中間まとめをする考えを示している。(松本輝)

 <クリック>黒い雨 原爆投下直後に降った放射性物質や火災によるすすを含む雨。国は1945年の広島管区気象台の調査を基に、長さ約29キロ、幅約15キロの卵形のエリアに降ったと判断し76年、爆心地から広島市北西部にかけての長さ約19キロ、幅約11キロを援護対象区域に指定した。国は区域で黒い雨を浴びた住民に無料で健康診断を実施。がんや白内障など国が定める11疾病と診断されれば被爆者健康手帳が交付され、医療費が原則無料になるなどの援護策を受けられる。

 一方、区域外で黒い雨を浴び、手帳の交付申請を却下された広島市や広島県安芸太田町の男女が市と県に却下処分の取り消しを求め、2015年11月〜18年年9月に順次、広島地裁に提訴した。市、県に手帳の審査、交付事務を委託している国も被告として訴訟に加わる。

【黒い雨、解明への道筋は】
<1>発生の仕組み きのこ雲から放射性物質降る
<2>新たな検証 五つの視点、課題は山積 国が検討会
<3>体験者の今 心身癒えぬ苦しみ 援護区域拡大へ闘い続く
<4>検討会委員の広島大名誉教授・鎌田医師に聞く


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