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黒い雨訴訟、政府が広島県と市に上告要請

2021/7/24 7:10

原告全員を被爆者と認めた広島高裁判決を受け、「全面勝訴」の紙を掲げて喜ぶ支援者たち=14日午後3時3分(撮影・大川万優)

 広島への原爆投下後に降った「黒い雨」を巡り原告84人全員を被爆者と認めた広島高裁判決で、訴訟に参加する国は23日、被告の広島県と広島市に、最高裁へ上告するよう要請した。広島市役所であった非公開の会合で、厚生労働省の幹部が「判決には科学的知見がない」などとして県、市に求めた。県と市は上告しない意向を示したため結論は出ず、上告期限の28日へ向けて引き続き協議する。

 【地図】黒い雨が降ったエリア

 複数の出席者によると、非公開の会合には、厚労、法務両省の幹部と、田辺昌彦副知事、小池信之副市長たちが出席した。

 国側はまず、県と市に上告を要請。高裁判決について「被爆者援護法の枠組みを大きく壊すもので、看過できない」などと訴えた。原告全員を被爆者と認めるには科学的根拠が必要と主張。放射線を浴びた量に限らず内部被曝(ひばく)による健康被害の可能性があれば被爆者と認めるべきだとする判決内容にも疑問を呈した。

 これに対して県と市は「上告せずに訴訟を終結させたい」「速やかに国の援護対象区域(大雨地域)を拡大してほしい」などとあらためて伝えた。原告全員を被爆者と認めた昨年7月の一審広島地裁判決を受けて、厚労省が区域拡大も視野に入れて設けた検討会の議論の進み具合にも不満を示し、原告たち黒い雨体験者の早期救済を説いた。

 このため会合では結論が出ず、結果をそれぞれ持ち帰って引き続き協議することで一致した。上告期限に向けた今後の対応では、湯崎英彦知事と松井一実市長が26日にも上京し、菅義偉首相に上告断念を直談判して「政治決着」を図る案も浮上しているという。

 高裁判決後、国、県、市がそろって意見交換するのは初めてで、この日の会合は国側が呼び掛けた。県と市は16日、上告を断念するよう政府に要請。国は県と市に対して、上告の必要性は伝えていた。(河野揚、久保田剛)

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