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木次線「おろち号」連日満席 ファンら「なくさないで」

2021/9/6 20:34
出雲八代駅で乗客に手を振り、歓迎する地元住民(8月20日、奥出雲町)

出雲八代駅で乗客に手を振り、歓迎する地元住民(8月20日、奥出雲町)

 JR西日本が2023年度で運行を終了すると発表した木次線のトロッコ列車「奥出雲おろち号」に今夏、多くの地元客や鉄道ファンが駆け付け、連日満席が続いた。「あまりに惜しい」「さみしい」。景観だけでなく列車そのものに見どころが多く、存続を求める声や残念がる声が相次ぐ。沿線の道の駅には、応援の寄せ書きコーナーも設けられた。

 主に木次(雲南市)―備後落合(庄原市)間の60・8キロを走るおろち号。8月中旬、片道を乗車した松江市の意東小6年森脇恵太さん(12)は「行きは車で沿線を観光、帰りはトロッコに揺られて、片道ならではの楽しさがあった」と笑顔だった。木次駅によると、今季の運行を再開した7月22日以降、平日を含め予約が埋まり、往復の切符が手に入らない人もいたという。

 「おろち号に旗を振りました」「トロッコ列車なくさないで!」。島根県奥出雲町の三井野原駅近くの道の駅「奥出雲おろちループ」(同町八川)には利用者からのメッセージが並ぶ。JRが運行終了を今年6月に発表。観光のシンボルとして23年間走ってきた列車を「なんとか残したい」と、7月20日に寄せ書きコーナーを設けた。

 道の駅は列車に手を振ったり、写真を撮ったりする利用者が多く、おろち号目当てに訪ねる人も多い。藤原紘子駅長(37)は「わざわざメッセージを書くために来てくれる人もいる。みんなさみしい思い」という。

 出雲八代駅(同町)の前では、周辺の布勢地区を元気にしようと、おろち号の到着時間に合わせて地元の子育て世代の母親たちが屋外カフェを開く。停車時間は1分。列車に「温泉もあるよ。また来てね」と子どもと一緒に手を振る。5月からカフェを営む内田圭子さん(37)は「おろち号がなくなっても木次線に乗ってまた来たいと思ってもらいたい」と前向きに話した。

 豊かな自然のほか、木次線ならではの「3段式スイッチバック」は鉄道ファンも引き付ける。進行方向を2回変えながら急勾配を上る姿に、約60年前から木次線に通い続ける田野城喬さん(76)=京都市=は「数分後にははるか下に駅が見える。これだけのために来る人もいるはず」と語る。「新型コロナウイルス禍で簡単に行けない中、なくなってしまうのはあまりに惜しい」と声を落とした。

 おろち号の利用者数は08年度の2万316人をピークに、近年は1万人台前半で推移。20年度は新型コロナの影響で5640人と減った。今年は週末を中心に、11月23日まで運行を予定する。(寺本菜摘)

 <クリック>木次線のトロッコ列車「奥出雲おろち号」 1998年に運行を始め、2010年から出雲市発の便も加わった。3両編成でディーゼル機関車が窓のない開放的な客車を牽引(けんいん)する。JR西日本米子支社は今年6月、製造から約50年の車両が老朽化しているとして、23年度までで運行を終える方針を発表。島根、広島両県、雲南、松江、出雲、庄原市、奥出雲町とJRは8月に検討会を設け、沿線の観光振興のあり方を含め議論している。 


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  • 道の駅「奥出雲おろちループ」に寄せられた木次線への応援メッセージ

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