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「黒い雨」年老いた申請者たち「残された時間少ない」

2021/10/11 22:52

広島市が設けた窓口で申請の手続きをする黒い雨の被害者たち

 「みんなで被爆者と認められたい」「残された時間は少ない。一刻も早く」。11日、「黒い雨」の被害者が被爆者健康手帳の交付を求め、広島市に集団申請した。原告全員を被爆者と認めた7月の広島高裁判決から約3カ月。政府が原告以外も救済する方針を示したものの、新たな認定基準は示されていない。年老いた申請者からは早期救済を求める切実な声が相次いだ。

【一覧】「黒い雨」訴訟で争われた主張とは

【関連】原告19人が見届けられず 「政府の決断、早ければ」

 広島市佐伯区五日市町下河内(当時は河内村)の前田勝司さん(85)は、近所の25人と一緒に中区の申請会場を訪れた。

 9歳の時、国民学校から帰宅する途中に雨を浴びた。爆心地から約14キロ。シャツには黒い染みができていたが、国の援護対象区域の外だった。約20年前に脳動脈瘤(りゅう)を患い「黒い雨のせいでは」と不安が募った。

 集団申請へ駆り立てたのは広島高裁判決だ。黒い雨が国の援護対象区域より広範囲に降ったと認め、区域外で雨に遭った原告全員への手帳交付を命じた。その後、前田さんが同級生や住民に申請を呼び掛けると「実は私も浴びた」などと仲間が集まった。「みんなで一緒に被爆者と認められたい。地域の願いです」

 東区の村上アサ子さん(81)は安野村(現広島県安芸太田町)の自宅の近くで遊んでいて雨に遭った。約20年前も申請を試みたが「区域外」として受け付けてもらえなかった。国の線引きで門前払いされた悔しさは今も忘れられない。

 この日は県内各地で申請が相次いだ。廿日市市役所で申請した村重頼枝さん(76)は生後10カ月の時、加計町(現安芸太田町)の実家で日なたぼっこをしていて雨を浴びたという。貧血や白内障に悩まされ「今後もどんな病気にかかるか分からない」と訴えた。

 高裁判決後、政府は原告以外も救済すると表明。被爆者の認定基準の改定へ、厚生労働省が県と広島市と協議を始めた。厚労省は「新たな基準を早急に示せるよう検討を進めたい」とするが、具体案や時期は示されていない。

 甲状腺の病気に悩まされてきた大江千代子さん(76)=佐伯区=は生後3カ月の頃、母の背中で黒い雨に打たれた。「残された時間は少ない。一刻も早く核兵器の被害に苦しんだ一人と認めてほしい」と求めた。(小林可奈、松本輝、八百村耕平)


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