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カオスな日々 夢見た兼業生活どこへ【記者ときどき耕作ビト】<上>

2021/10/16 20:59
昔ながらの稲刈り体験会は、農家グループの師匠たちの指南で今年も無事終わった(3日、東広島市福富町)

昔ながらの稲刈り体験会は、農家グループの師匠たちの指南で今年も無事終わった(3日、東広島市福富町)

 続いてるんです。東広島市福富町での子ども向け体験農園mikke(みっけ)。この春まで地域おこし協力隊として取り組み、新聞社へ復職したけど、誰に頼まれているわけでもなく。仕事と活動のペース、中年オヤジ(45)の体力、新型コロナウイルス禍…。本紙記者と「二足のわらじ」の探り探りの半年を報告する。

<中>アドバイザー 「三足」履くマルチ農家
<下>「ダッシュ村」 若者パワー、一気に開拓

 山里の静かな朝。ひんやりとした空気が心地いい。チュン、ピピッ。小鳥のさえずりに和みながら、体操代わりの野良仕事。取れたて野菜で朝食を済ませ、やおら西条の職場へ向かう―。

 といった生活を、夢想していた自分のお気楽さが恥ずかしい。世間相手の記者稼業も、自然相手の耕作も、そんな都合良くいくはずなかった。

 現実は…。起き抜け、ドタバタとつなぎと長靴をまとう。寝癖頭のまま、母屋脇の畑で水やり。軽トラに飛び乗り、東に1分の農園mikkeへ向かう。手押し車に農具を積んで畑へダッシュ。鋤簾(じょれん)を振って畝を立てる。小鳥の鳴き声? 右から左へスルーだ。

▽泥だらけのつなぎをたらいに浸し…

 「精が出るねえ」。向かいの農産品加工販売施設「福富物産しゃくなげ館」に出勤した水脇正司館長(79)が寄ってくれる。「いやあ、朝だけなので」。帰宅するや、泥だらけのつなぎをたらいに浸し、高速でシャワーを浴びる。ふう。

 30分後、わが身は市役所の一室にある。「中国新聞です。ワクチン接種について伺います」。一転、こぎれいな身なりで会見取材に臨む。ふと、爪の間の泥を見て思う。あ、畑の電気柵のゲート、閉め忘れたかも。

 節操のない、こんな二足のわらじは、地区の農家グループの「師匠」たちの手助けなしでは履けない。mikkeの活動の柱である米作り。5月半ばの手植え体験会は、緊急事態宣言が出されることが直前に決まり、開催を見送った。

 転んだらネタにする記者魂。水だけ張った田のあぜに立ち、「1人で植えてみるか」と心を燃やす。

 「無理無理。腰を壊すで」「今年は仕方ない。機械でしちゃるけえ」と師匠たち。「ですよね」。あっさりと甘えた。翌々日の朝、3アールの田に整然と苗が並んでいた。グループ最年長、原田信治さん(78)が田植え機でした仕事だった。

 長雨と猛暑に耐え、時は流れた今月3日。澄んだ空の下、稲刈り体験会を催した。秋祭りの準備を終えて疲れているはずの師匠5人も快く集ってくれた。

 「皆さん、思う存分、刈りましょう」。気分が上がった筆者は親子連れたちに呼び掛けた。イベントに何度か通ってくれている子の顔もある。「来たよー」。事件、総選挙と押し寄せる緊張の日々。懸案の取材や締め切りが迫る原稿のことはしばし、忘れておこう。

 その夜、グループの「親分」から「今日は疲れたじゃろ」とねぎらいの電話が鳴った。別の師匠からはスマホに「ありがとう。あなたはうちのメンバー」とメッセージが届く。心と体の疲れも飛んだ。さて、明日からまた頑張ろっ。(教蓮孝匡)


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