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原発の「地元」 新増設記載なしに意見交錯

2021/10/22 22:55

上関原発の建設予定地。奥は祝島

 22日に閣議決定した国のエネルギー基本計画は再び原発の新増設を記載しなかった。中国電力が新設を計画する山口県上関町では、推進派は新増設の議論を深めるよう求め、反対派は「当然」と受け止めた。ただ、原発の再稼働は進める姿勢を維持。原子力規制委員会の審査に正式合格した島根原発2号機(松江市)の地元からは、速やかな再稼働と脱原発を求める住民の声が交錯した。

 【関連】30年度に再生エネ倍増 基本計画閣議決定

 「上関原発は国が重要電源開発地点に指定しており、新増設の議論を深めるべきだ」。推進派の町まちづくり連絡協議会の古泉直紀事務局長(63)は求めた。「耐用年数を考えればいずれ新増設は必要」と受け止める。

 上関原発の計画が浮上して来年で40年。予定地沖では、中電が建設に向けた海上ボーリング調査を3年連続で試みたが今月、反対派の集結を受けて中断を発表した。上関原発を建てさせない祝島島民の会の清水敏保代表(66)は、今年で10年を迎えた東京電力福島第1原発事故を踏まえ「国民の理解が得られていない中、新増設が盛り込まれないのは当然」と再生可能エネルギーの活用を求めた。

 2030年度の電源構成「原子力20〜22%」の目標値もハードルが高い。福島の事故後、再稼働したのは10基。島根2、3号機を含めて審査中の全ての原発を動かす必要がある。

 島根原発が立地する鹿島自治連合会の亀城幸平会長(71)は「電力の安定供給と町の活性化に原発は必要。説明をきっちりとして粛々と進めないといけない」と力を込める。

 一方で、島根原発・エネルギー問題県民連絡会の保母武彦事務局長(79)は「国は原発依存から脱しないというメッセージと感じた」と強調。新型コロナウイルス禍で人の動きや経済活動が変化する中で「再エネだけでは安定供給できないという意見もあるが、コロナ禍を踏まえたエネルギー消費の検証がされているのか」と疑問を呈した。

 中電はこの日、脱炭素社会に向けて「一定規模の原発を活用するためにも、新増設・建て替えはおのずと必要になっていく」とコメントした。

 環境問題に取り組む非政府組織(NGO)「FoE Japan」(東京)の吉田明子理事(40)は「規制委の審査短縮を求める声もあるが、適正なプロセスが飛ばされる恐れがある。現状以上に再稼働を加速させてはいけない」と強調。「産業や暮らしの在り方を含め、電力消費をどう減らすかも考えなければいけない」と指摘する。(山本祐司、高橋良輔、榎本直樹)

 ▽炉は新しく、依存度低減を 経産省審議会委員の橘川・国際大副学長に聞く

 新たなエネルギー基本計画を議論した経済産業省の審議会「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」委員で、電力業界に詳しい国際大副学長の橘川武郎氏に、中国地方での原発事業や脱炭素社会の行方を聞いた。(榎本直樹)

 ―今回も原発の新増設・建て替え(リプレース)は記載されませんでした。

 選挙を意識した政治的な理由だ。記載しなかったのは反対派に対するメッセージ。一方、2030年度の電源構成比率で原子力を20〜22%と高めのまま維持したのは推進派へのメッセージ。問題の先送りで、双方に期待を持たせて何もやらない手法だ。

 ―20〜22%の達成は難しいのではないですか。

 原子力規制委員会が審査中の原発を全て動かさなければ達成できず、規制委をばかにしたような話だ。原発の危険性を最小にするには新しい炉の方がいい。古い炉は廃止し、新しい炉を造りながら全体として原発依存度を下げるべきだ。

 ―中国電力の上関原発の計画は不透明のままです。

 今回、電力業界の二酸化炭素の削減目標がさらに上がった。現実的に難しいが、中電は上関原発を造ると言わざるを得ない。広島県大崎上島町で実証試験中の大崎クールジェンのような最新鋭の石炭火力設備を造ればいい。それを将来、水素を使った発電に移行していくのは難しくない。

 ―石炭火力を使い続けることに異論もあります。

 確かに逆風はあるが、石炭火力の設備はアンモニアを使った発電に使える。中電も技術を持っている。原発にこだわるのではなく、世界に貢献できるストーリーも考える必要がある。


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  • 橘川武郎氏

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