中国新聞U35

ネット中傷被害、消せぬ苦しみ 不倫のデマ流された山口の女性、投稿削除に高い壁

中国新聞U352021/11/7 23:01
ネット上で誹謗中傷された山口県内の女性

ネット上で誹謗中傷された山口県内の女性

 山口県内の50代女性は2年前、インターネットの匿名掲示板に実名をさらされ、身に覚えのない醜聞を流された。「○○って人、不倫してるよ」と。加害者には罰金刑が科せられたが、問題の投稿は今なお削除できず、女性は「この苦しみが一生付きまとうんでしょうか」と悩む。被害者にも加害者にもなり得るネット空間。皆さんはどう向き合っていますか。

 ■被害の始まり〜2019年秋

 「大変なことになってるよ」。同僚から知らされたのは2019年11月だった。匿名ユーザーが情報を交わす掲示板に自分のことが書かれているらしい。聞いたこともないそのサイトを探し当て、女性は目を疑った。不倫のデマを流され、職場まで暴露されている。「この人、見たことある」「地獄行きだな」…。既に無数のコメントが連なっていた。

 サイトには「削除依頼に対応する」とある。早速、定型フォームで削除を求めたが、何回トライしても「72時間をめどに検討する」と素っ気ない回答があるだけ。一向に削除されなかった。

 「私、誰かに恨まれることをしたのかな」。心当たりはなかったが、職場に出るのが怖くなった。やましいことは何もないのに人目が気になる。名札を着けるのも電話で名乗るのも嫌になった。夫も冷静ではいられなかったようだ。「電話に出なかったのは誰かと一緒だったから?」と疑われた。仕方ないと思ってみても、やはり傷ついた。

 ■犯人に罰金刑〜20年秋

 同じ掲示板には、不倫相手に仕立てられた友人男性の個人情報もさらされていた。連絡してみると「あいつかも」。仲たがいした知人がいるという。泣き寝入りはすまいと、すぐに警察へ相談したが、最初に対応した職員は「及び腰」の印象。「犯人特定は至難の業」と説明された。

 確かに難しいだろうと思いつつも、諦められなかった。警察も手を尽くしてくれた。「書き込んだ男が分かった」と連絡を受けたのは、半年後の20年6月。男はやはり、友人の知り合いだった。警察の聴取に犯行を認め、名誉毀損(きそん)の疑いで送検された。検察も起訴し、その秋、40万円の罰金刑が決まった。

 男は友人男性にだけ恨みがあったらしい。女性はとばっちりに遭った格好だ。「軽率な行為がどんなに人を苦しめるか。罪に問われることなのだと自覚してほしい」と憤る。

 ■消せない書き込み〜21年春

 ほっとできたのはつかの間だった。21年春、久々に掲示板を開いた女性は血の気が引いた。あの投稿が、目に付きやすい場所に残っていたからだ。

 「何とかしないと」。サイト運営業者に再び削除依頼を出したが、やはり機械的な返信があるだけ。業を煮やした女性の目に付いたのは、この掲示板に載っていた東京の弁護士事務所の広告だった。「ネット問題専門」とある。相談メールを送ってみた。

 ■削除料55万円〜21年秋

 返ってきたのは「2週間ほどで消せる」との頼もしい答えだった。だが、請求金額にも驚いた。「税込み55万円」と書かれていた。

 別の弁護士には「削除は難しい」と断られた。夫は「払ったらいい」と言ってくれる。「消せたらどんなに楽になるか」と女性も思う。ただ疑念もよぎるのだという。いとも簡単に消せるというのは、掲示板の運営業者から広告料の見返りを受けているからでは―。

 「一方的に傷つけられた上、ネット業界の食い物にされているとしたら悔しすぎます」。この事務所を頼るかどうか、女性は決めかねている。(文・田中美千子、写真・大川万優)

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 ネット上での誹謗中傷に遭ったときの対処法などは、投稿サイトnote「中国新聞U35」で。ネット被害の体験談をお寄せください。メールhoudou@chugoku―np.co.jp


<詳細はnoteへ>
→ネットで不倫のデマを流された山口県内の女性。投稿が削除されない理不尽
→ネット上の誹謗中傷。被害に遭ったらどうすれば?

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