中国新聞U35

現場訪れる記者 見えてきたのは―【エキニシ大火】

中国新聞U352021/11/19 21:26
大規模火災で26棟が延焼したエキニシ。被災したブロック(右側)の店舗は休業が続く

大規模火災で26棟が延焼したエキニシ。被災したブロック(右側)の店舗は休業が続く

 JR広島駅西側の飲食店が連なる通称「エキニシ」(広島市南区)で10日早朝に発生し、26棟を焼いた大規模火災。現場に連日訪れる記者たちの胸には、飲食店主らの悲痛な思いが突き刺さる。その中で見えてきたのは、街の懐の深さだ。

【地図】エキニシの延焼エリア

 10日午前6時。記者東山慧介(28)は、県警担当の先輩記者からの電話でたたき起こされ、現場に向かった。煙が立ち上る中、規制線の外側のワインバーで、避難した人たちが身を寄せ合い、店主がホットウイスキーを振る舞っている。飛び込んで、話を聞いた。

 「一度は集会所に避難したけど、現場が見えん所におったら不安で…。本当にありがたい」。カラオケスナック店のママ(76)が、肩を震わせながらグラスを握り締める。ママを店の関係者がいたわる。ここは助け合う土地柄なんだ―。東山は知った。

 ▽「ここで再開させたい」前向く姿を胸に

 戦後の古い木造建築が隣り合う大須賀地区。ここ10年ほどで、個性豊かな飲食店が次々とオープンし、「エキニシ」と呼ばれるようになった。駅前で進む再開発を逃れ、昭和なレトロ感に加えて猥雑(わいざつ)な雰囲気をまとう独自の「進化」を遂げる。だが今回は「木造」「密集」の弱みにさらされてしまった。

 東山は、居酒屋を営む女性(61)が被災した店内を初めて確かめる場面に立ち会った。そっと話しかけると、女性は18年間の店の歩みや再開への決意を話し始め、みるみる目を潤ませた。「初めて涙が出た」と話す女性に、東山はもらい泣きしそうになった。

 現場に入った記者阪本茉莉(25)もすぐ、この街の絆を目の当たりにした。被災した店のがれきやごみを運び出す作業を、他の店の関係者が積極的に手伝っている。ラーメンを振る舞う店もある。被災した店のビールや日本酒をほかの店が代わりに売り、売り上げを寄付する取り組みもキャッチ。「僕ら、つながりがあるんよね」。優しい言葉に触れた。

 記者小林旦地(24)は、被災した韓国料理店の男性店長(38)と話した時のことが忘れられない。わざわざ片付けの手を止め、穏やかに対応してくれた。被害は小さく、店の再開の予定も立っているのだろう。そう思い込み、和やかな雰囲気で取材を始めた。

 だが、店内に入った瞬間、質問ができなくなった。2階に上がると、屋根が焼け落ち、青い空が見えた。「再開の見通しは全く立っていません」。変わらぬ声で淡々と店長は言った。

 大事な店が焼けて、なぜこんなにも強く穏やかでいられるのだろう。混乱する小林に店長は続けた。「被災した人たちも僕の店の片付けを手伝ってくれる。そんな温かい街なんです。だから、ここで店を再開させたい」。懐深い街で前を向こうとしていた。(東山慧介、阪本茉莉、小林旦地)

 ◇

 エキニシの火災について記者たちの思いをつづった記事の詳細は、投稿サイト「note「中国新聞U35」」で。

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  • 店が被災した男性(左)に話を聞く阪本記者

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