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大半が警戒区域外 行政対応追い付かず

2014/8/22 10:38

 広島市安佐南、安佐北区で20日に相次いで発生した土砂災害現場の大半は、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域に指定されていなかった。同法は1999年に発生し、広島県内で32人の死者、行方不明者を出した「6・29豪雨災害」を教訓に制定された。土砂災害が起こる可能性が高い危険箇所の多さに行政対応が追い付かないことと、地価下落への住民の懸念が、指定遅れの一因になっている。

 土砂災害防止法では、都道府県は主に危険箇所の地形や地質を調査した上で、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)を指定。うち住宅が密集するなど、より危険度が高い所を特別警戒区域(レッドゾーン)に指定する。警戒区域はハザードマップ作製が市町村に義務付けられ、特別警戒区域では宅地開発や建物新築に自治体の許認可が要るなど一定の制限がかかる。

 県内で土石流や崖崩れの恐れがある3万1987カ所の危険箇所のうち現在、警戒区域は1万1834カ所。4割弱にとどまる。安佐南区八木、緑井、山本、安佐北区可部の4地区で今回被災した現場は全て危険箇所に含まれるが、警戒区域の指定は可部地区だけだった。

 2001年に土砂災害防止法が施行されて以降、県は、被災したことがある危険箇所の調査を優先。未指定となっている今回の災害現場は過去に目立った被害がなく、後回しになった格好だ。県砂防課の担当者は「限られた予算と人員で対応する中、優先順位を付けてやってきたのだが…」と苦渋の表情を浮かべる。

 さらに指定が遅れてきた背景には、資産である土地の価格への影響を心配する住民感情がある。指定に住民同意は義務付けられていないが、県は「災害時の協力態勢を築くには不可欠」と、事前に住民説明会を開く。「説明会の場で地価下落を心配する声は確かにある」と担当者。規制の生じる特別警戒区域となればなおさら、住民の理解を得るのに時間を要する。

 広島経済大の松井一洋教授(災害情報論)は「県は住民と対話を重ね、着実な指定に向けて可能な限りの工夫をしてほしい」と指定のスピードアップを要求。住民にも「財産価値よりも、どう自分の命を守るかを真剣に考える必要がある」と提起している。(松本恭治)


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