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山陽線脱線の「コキ106」貨車、同型が東京、北海道でも事故

2021/12/30 0:16

 広島市安芸区のJR山陽線八本松ー瀬野間で28日夜に起きた貨物列車の脱線事故。この区間は「セノハチ」の名で知られる急坂と急カーブの難所で、専門家によると、さまざまな原因が重なった「乗り上がり脱線」の可能性があるという。今回脱線したコンテナ貨車「コキ106」形式の同型車は、過去にこの区間のほか、東京、北海道でも脱線事故を起こしており、国土交通省の検討会が鉄道事業者に台車の改良などを促していた。

JR山陽線脱線、車両の撤去完了 復旧作業へ

【空撮など写真集】山陽線の脱線現場(12月29日)

【写真集】脱線車両の切り離し 山陽線脱線事故(12月29日)

 29日現地入りした国交省運輸安全委員会の鉄道事故調査官によると、脱線の痕跡である枕木の傷は、半径300メートルの右カーブが終わってほぼ直線になる瀬野西トンネル入り口手前から付いていた。鉄道総合技術研究所で研究員の経験があるライトレール(東京)社長の阿部等さんは「車両が不安定になりやすいカーブの出口で脱線した可能性がある」とみる。

 鉄道のカーブでは、遠心力を打ち消すため、「カント」と称して外側のレールが内側より高く敷かれる。カーブ出口では元に戻すため、外側のレールが徐々に低くなっていく。このとき台車の四隅の車輪のうち前外側の1輪が、レール面の低下に追随しきれず、浮きやすくなる。「輪重抜け」と呼ばれる現象で、「平らでない床に4本脚の机を置くと、1本の脚が浮くのと同じ原理」という。車輪がレールを踏む上下方向の力が弱まり、遠心力が勝ると「乗り上がり脱線」が起きる。

 この区間では1998年8月にも貨物列車の脱線事故が起きている。半径300メートルのカーブで21両編成の貨物列車の3両目が脱線。国交省は、乗り上がり脱線事故とみている。JR側は、左右のレールの局所的なゆがみや外側レールの高さ(カント)不足なども影響したと結論付けている。

 阿部さんは、この「セノハチ」区間特有の貨物列車の運行方法が一因である可能性もあるとみる。急坂を上るため、貨物列車の最後尾で2台目の機関車が後押しをする区間。「後押しの力が強すぎると、貨車が浮き上がりやすい」

 一方で、貨車側の原因も考えられる。国交省の資料によると、今回脱線したコキ106形式の貨車は98年のセノハチでの事故のほか、2003年5月に東京貨物ターミナル駅(品川区)構内、12年9月に北海道の江差線(当時)でも乗り上がり脱線を起こしている。

 運輸安全委員会は15年12月にまとめた意見書で、「1982‐97年に起きていなかった貨車の乗り上がり事故が、コキ106形式の製造が始まった翌年の98年以降に7件起きた」と問題視し、同形式について「ばねの特性で車体の揺れが収まりにくく、脱線につながりやすい」などと指摘。20年9月には、同省の検討会が、台車のダンパー改良などの再発防止策をまとめていた。(馬場洋太、佐藤弘毅)


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