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【天変 教訓は生かされたのか】夜間避難、難しい判断

2014/8/24 9:29

押し寄せた土砂に覆われた広島市安佐南区八木地区の住宅地(手前)。奥には中心市街地が広がる(20日午前9時40分、撮影・天畠智則)

 ▽悩む自治体・住民 指示待ち自戒も

 広島市安佐南、安佐北の両区で甚大な被害が出た20日の広島土砂災害。市が最初の避難勧告を出したのは午前4時15分だった。悪天候や道路冠水の影響で、すでに身動きが取れない住民もいた。

■通例 こだわる

 市内で自治会長を務める男性の自宅周辺は、この頃、水で道がほとんど見えなかった。「いま動くのは危ない。住民に避難を促していいのだろうか」。悩み、苦しんだ。自治会役員と話し合い、住民への電話連絡は見送った。

 その後、自治会員の夫婦が土砂に流された。判断は間違っていたのか、避難勧告がもっと早ければ―。夫婦の命は助かったが、やりきれなさは募る。「命を預かる。正解はないかもしれないが、判断は難しい」。責任の重さを痛感している。

 夜間に豪雨が襲った今回、勧告の遅れを指摘されている広島市。避難先を確保したうえで住民に勧告する通例にこだわった。夜間閉鎖中だった公共施設を避難所として使用するため、職員の招集に時間を要した。消防局危機管理部の金山健三部長は23日の会見で、勧告の在り方を再考する考えを示した。

■全国的に議論

 危険が伴う夜間の避難。過去の災害でも、夜間の避難や勧告をめぐる議論は常に巻き起こり、自治体と住民は難しい判断を迫られている。

 2009年8月、兵庫県佐用町を襲った豪雨災害では、夜間の濁流に流された住民の遺族が「不適切な避難勧告の発令が原因で死亡した」と、町を相手に損害賠償請求訴訟を起こす事態となった。昨年10月の台風で39人の死者・行方不明者が出た伊豆大島(東京都)では、町が避難勧告を出さなかったことに批判が集中。町長は「深夜の発令は被害者を増やす恐れがある」と説明した。

 今回、土砂が民家に押し寄せた現場は広島市中心地から20キロ圏内。山裾に住宅が立ち並ぶ地域は市郊外の至る所に広がる。局地的な豪雨が増えるなか、今回のような土砂災害はどこでも起きる恐れがある。

 「まずは自宅2階に避難し、山側から離れた部屋に逃げることも大切になる。指示待ちの姿勢ではいけない」。広島県認定の自主防災アドバイザー井上重人さん(72)=呉市=は自らを戒めるように続けた。「自然災害から自らの命をどう守るのか。一人一人が関心を寄せる必要がある」(有岡英俊、久保田剛)


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