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斜面の大半が保安林未指定 八木地区、適切管理されず

2014/9/14 10:05

 広島市の土砂災害で多くの犠牲者が出た安佐南区八木地区で、土石流が多発した阿武山の南東斜面の大半が、土砂災害防止を目的とした保安林に指定されていないことが13日、分かった。指定権限を持つ広島県は、その理由について「指定の経緯が古く、よく分からない」とする。専門家は「指定して県が適切な手入れをしていれば、被害が軽減できた可能性がある」と指摘する。

 ▽県「理由は不明」

 未指定となっているのは阿武山の南東斜面約300ヘクタール。この斜面では今回、県が約20カ所で土石流を確認した。国有林がある山の北西側一帯や、緑井地区の山裾は、県と国が1920年から2012年までに、土石流防止などを目的に、保安林に指定してきた。甚大な被害が出た八木地区の住宅街に接する部分は、すっぽり抜け落ちた形になっている。

 県などによると、未指定の山林は民有の自然林で、もともとアカマツが生えていた。松くい虫で枯れた後、シラカシなどの常緑広葉樹に替わっていったという。

 保安林は、水源地として雨を蓄えたり、土砂災害を防いだりするのが目的で、山が荒れないよう民間所有者の伐採や開発を規制している。代わりに、都道府県が植林などで山林を管理する。八木地区は70年代以降、宅地開発が進んだ。県はそれに先立つ68年、緑井地区の山裾など周辺の山林は、土砂災害防止の保安林に指定していた。

 広島県内に61万2千ヘクタールある山林のうち、保安林は24万7982ヘクタールと約4割を占め、県は山林の維持管理に年間で約20億円を投じている。県森林保全課は「地域森林計画に沿って指定を進めてきたが、八木地区の住宅街近くの山林は計画に組み入れていなかった。理由は、はっきり分からない」と繰り返す。

 災害後、現場に入った東京農工大大学院の石川芳治教授(砂防学)は「樹木が密集して生えており、人の手が入っていなかった。光が入りづらいせいか、通常より太さが半分程度の直径10〜15センチで、根が張っていない生育の悪い木が目立った」と強調。「適度に間伐して太陽光を入れ、保水力を高めたり、深く根を張るケヤキを植えたりすれば、被害は小さくなっていたかもしれない」と指摘する。

 林野庁によると、熊本県では、保安林にクヌギを植えたり、治山ダムを設けたりして土石流の被害を軽減できた例があるという。広島県森林保全課は「今後、指定を検討したい」としている。(中島大)


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