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危険性64%が認識せず 「被災地の50人」本社調査

2014/10/1 9:47

 ▽行政と意識共有が鍵

 広島市で8月20日未明に起きた土砂災害で、中国新聞は安佐南、安佐北両区の住民50人に意識調査を実施した。災害の発生当時、64%に当たる32人が自宅付近の土砂災害の危険性を認識していなかった。被害が集中したエリアは、土砂災害危険箇所の多い山際の土地。危機意識を住民と行政がどう共有して災害に備えるかが、課題として浮かび上がった。

 被害の大きい地域は、広島県指定の土砂災害危険箇所や、避難体制を整える土砂災害警戒区域。しかし、32人が土砂災害の危険性の認識が「なかった」と回答。自宅に被害があった31人に絞ると、20人に認識がなかった。「あった」と答えた住民は16人にとどまった。

 被災した場所に住み続けるかとの問いには、34人が「はい」と回答。一方で、「いいえ」「どちらとも言えない」と答えたのは計16人。理由は避難勧告が継続され、二次災害を恐れていることなどが目立った。

 勧告の遅れなどが指摘されている行政の対応に「満足しているか」との問いには、最多の21人が「どちらでもない」と回答した。理由は「誰も予測できない集中豪雨だった」など。一方で、「不満」「やや不満」の合計は半数以上の28人。より早く勧告を出すよう求める声が多い。

 災害の影響で心身の不調を感じているのは半数近い24人。「眠れない」「避難先の生活になじめない」など理由は多岐にわたった。

 調査は9月11〜26日、土石流などで甚大な被害が出た両区で実施。自宅が壊れたり、避難生活を送ったりした住民を記者が訪ね、面談して聞き取った。50人に対する意識調査は今後も続け、暮らしの再建や地域への思いなどを尋ねていく。(広島土砂災害取材班)

 <調査の方法>被災時に広島市安佐南区の八木、緑井、山本地区と安佐北区の可部東、三入南、大林地区にいた住民の協力を仰いだ。家族を亡くした人を含む男女の16〜84歳。平均年齢は60歳。記者に答えた自宅の被害は、全壊や半壊などの「床上浸水以上」が17人、「床下浸水」は14人、「被害なし」は19人だった。

 ≪解説≫命の重み胸に 対応見直しを

 広島土砂災害の被災者たち50人を対象にした意識調査は、全国最多の3万1987の危険箇所を抱える広島県内でさえ、その危険性が十分に認識されていなかったことを浮き彫りにした。局地的な豪雨が増えるなか、命を守る行動をいかに早く取るか。突き動かす危機意識の醸成は急務だ。

 被害の出た斜面は花こう岩が風化した「まさ土」などで覆われていたという。面積の約7割を森林が占める広島市では都市化が進む中、傾斜地は削られ宅地になった。しかし、もろい土質という情報や宅地として売られた場所の元の姿は、意識調査で知る限り、住民にはほとんど知らされていなかった。

 避難勧告の遅れやサイレンの未使用など、行政側の不手際に対する不満は根強い。最初に勧告が出されたのは午前4時15分。勧告に気付かず、停電のためテレビで確認できなかった住民もいた。

 「勧告の時には逃げられる状態ではなかった」。濁流を前に住民の多くは立ちすくんだ。後手に回った対応の遅れは取り戻せない。命を守る個人の意識と行政の早期対応。犠牲者74人の命の重みを胸に見直しを進めたい。(久保田剛)


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