地方経済

【地域きらり】「噂通り」楽しい街に 広島の可部駅東側、出店相次ぐ

2020/5/11
4月末に設置した噂通りの看板を見上げる平本社長(左)と大戸支配人

4月末に設置した噂通りの看板を見上げる平本社長(左)と大戸支配人

 広島市安佐北区のJR可部駅東側。南北に延びる旧雲石街道から駅へ向かう県道そばに4月末、「噂(うわさ)通り」の看板が立った。地元の飲食店主や会社社長が付近の約60メートルを名付けた。駅前を「うわさ通りに楽しいと言われる街にしたい」と考える事業者が結束を強め、活性化に取り組む。新型コロナウイルスの逆風にも手を取り合って立ち向かっている。

 ▽「人を呼ぶ」 飲食店主ら結束

 「飲みに出るのに市中心部でなく可部が選択肢になるようなエリアにしたい」。駅の真正面に2011年、おでん店「どうらく」を構えた佐藤真さん(39)は語る。「自分で街をつくっていく面白さがある」とこの地を気に入って出店した。

 18年には日本酒にこだわる居酒屋と串焼き店がオープンした。19年にできたビールバーは同区亀山にある広島北ビールの直営店。平本祐也社長(32)は「店が増えて辺りは一気に明るくなった。駅前を盛り上げようという店主たちの存在が出店を後押しした」と明かす。

 通りに名前が付いたのは昨年夏だった。松江市出身のコピーライター長谷川哲士さんが名付けた。通りの東端で1989年から続くホテルリッチの大戸由加支配人(56)からホテルのキャッチコピーを頼まれたのがきっかけ。ホテルに泊まり、近くの店もはしごした上で「ホテル単体より通り全体でネーミングした方がうわさになり、街に人を呼ぶ」と提案した。

 大戸支配人は快諾。一帯の事業者仲間も賛同した。背景には地域の衰退傾向があった。可部には江戸期から山陽と山陰を結ぶ要衝として栄えた歴史がある。しかし駅前に連なっていた商店は徐々に消え、人通りも減った。ホテルリッチはもともと酒販店として創業し大戸支配人で3代目。「生まれ育った街が廃れるさみしさは耐えられない。地元の人が再び魅力を感じる街にしたい」と動き始めた。

 通りの命名に合わせ、大戸支配人や一帯の飲食店の4人、地元の老舗でいずれも創業約150年の旭鳳酒造の社長や入江呉服店の6代目、3年前に設立した工務店「木の家」の社長で「噂通りの会」を結成。標識風の看板を設け、5月から駅東口で飲食イベント「噂通りのフェスティバル」を月1回開くと決めた。

 ところが―。新型コロナの影響でイベントは延期に。通りの4店も一斉に持ち帰り限定に切り替えた。

 苦境の中で8人は「今できることをしよう」と前を向く。今月中旬、可部地区の市立安佐市民病院の医療スタッフに弁当250食を差し入れる。工務店の社長が弁当を買い、通りの飲食店支援にもつなげる。

 通りには8日、高級食パン店が開いた。近くイタリア料理店もできる。大戸支配人は「会として新たに開業する人を応援していきたい。店が増え、噂通りが広がってほしい」と期待する。居酒屋「SAKEBarゆう」の岡原友祐店主(37)も「今は同年代が多いが、幅広い世代の人と一緒にもっと街を盛り上げていけたらいい」と考えている。(新本恭子) 


この記事の写真

  • 店の前で談笑する佐藤さん(左から4人目)や岡原さん(右端)たち噂通りの会のメンバー

上記の写真をクリックすると拡大して表示されます。

 あなたにおすすめの記事

  • 前の記事へ
  • 次の記事へ

同じ日の経済ニュースの記事
一覧