地方経済

【フィーチャー】マツダ中期経営計画 「180万台」早くも黄信号

2020/5/21

 ▽軌道修正の可能性

 マツダの成長戦略に黄信号がともった。稼ぐ力を高めて2024年度(25年3月期)に世界販売180万台を目指す6年間の中期経営計画(中計)は、販売不振と新型コロナウイルスの影響で初年度から揺らいだ。早くも修正の可能性が浮上。米国の新工場稼働を来年に控え、かじ取りは難しさを増している。

 マツダは14日、昨年11月に中計を示してから初めて決算を発表した。20年3月期連結の営業利益は前期の半分、世界販売は9・1%減の約142万台にとどまった。「販売の質の改善と数量の成長を両立できなかった」。古賀亮取締役は電話会見で悔しさをにじませた。

 ■「足場固め」直撃

 中計は1台当たりの利益率を高めて稼ぐ力を伸ばす道筋を描く。だが先陣として装備を充実させて価格帯を上げた新型マツダ3は振るわず、販売は感染拡大前から苦戦した。段階的に台数を上積む前提は崩れ、稼ぐ力を示すROS(売上高に対する営業利益の割合)も下がった。

 前半3年は重点的に先行投資する「足場固め」とし業績の谷間を見込んでいた。新型コロナはその「我慢の時期」を直撃した。後半3年で車体が大きく利益率の高い「ラージ商品群」を導入し本格成長する構想は不安定になった。

 20日には、3月末に始めた生産調整を6月末まで続けると発表した。本社宇品工場(広島市南区)と防府工場(防府市)にタイ、メキシコを合わせた4拠点の4〜6月の生産は約8万1千台と通常の1カ月分に及ばない。前年実績に比べ約23万台の減産となる。

 21年3月期の生産、販売の見通しは未定。世界市場が15%縮むと予測する英調査会社IHSマークイット(東京)の西本真敏マネージャーは「マツダは世界販売113万台、世界生産110万台」と見通す。

 ■新工場稼働控え

 マツダには、早急に販売を立て直さねばならない事情もある。トヨタ自動車と米アラバマ州に建設中の新工場だ。来年に稼働すればマツダに年15万台の生産能力が加わり、世界で約200万台造れるようになる。

 生産の増強には多額のコストがかかる。販売の成長が連動しなければ、新工場が財務を悪化させかねない。かつて米ミシガン州の工場は稼働率の低迷で赤字が続き、12年に撤退した。

 古賀氏は会見で「中計で掲げた戦略そのものは変更しない」と強調しつつ「やり方や規模、タイミングは調整したい」と軌道修正に含みを持たせた。広島県内の部品メーカー社長は「新型コロナで事態は変わったが、ラージ商品群は既に導入を1回遅らせている。売れる新型車が出なくなるのは困る」と注視する。

 マツダはリーマン・ショック後、4年連続で最終赤字に転落した。需要のてこ入れ策を練り、反転の足掛かりを見いだせるか―。大きな試練を迎えている。(井上龍太郎)

 【記者の目】戦略自体は妥当 高評価生かして

 高い品質と値引きの抑制でブランド力を向上させ、成長につなげる。世界の自動車業界では小規模なマツダの戦略としては間違っていないはずだ。だが中計1年目の業績は見立ての甘さが現れた。新世代商品は技術やデザインで高い評価を得ている。「コロナ後」に飛躍するためにも、ビジョンを見つめ直す必要がある。 

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