地方経済

労使トラブル、新型コロナで多発 中国地方、解雇・雇い止め1000人超す

2020/6/5
アルバイト先から送られてきた給料の未払いを告げるLINEの画面(画像の一部を修整しています)

アルバイト先から送られてきた給料の未払いを告げるLINEの画面(画像の一部を修整しています)

 ▽賃金未払いや退職勧奨も 問われる正当性

 新型コロナウイルスの感染拡大で企業の経営が厳しくなり、賃金の未払いや雇用の打ち切りなど労使間トラブルが多発している。中国地方で解雇や雇い止めが千人を超える中、労働者に負担のしわ寄せが出ている。労働問題に詳しい弁護士は企業に適切な対応を求めている。

 【ダイジェスト】新型コロナウイルス感染拡大 危機の中の中国地方


 「解雇させてほしい」。広島市中区の居酒屋でアルバイトをしていた男性は4月半ば、社長から突然告げられた。店は感染防止を理由に休業中だった。その2週間後、無料通信アプリのLINE(ライン)で社長から連絡があった。事業の継続を断念する方針と、4月分の給料が払えないとの内容が書いてあった。

 ■3カ月3926件相談

 男性によると、系列店を含むアルバイトの少なくとも20人が同じ境遇に置かれた。「生活が懸かっているのに一方的に終わらせるなんて」と憤る。

 会社の代理人の弁護士によると、6月に裁判所への破産申し立てを予定している。「新型コロナの影響で経営が悪化した。先行きが見えないため解雇に至った」と説明する。

 こうした労働トラブルは少なくない。広島労働局が県内3カ所に構える新型コロナ関連の「特別労働相談窓口」への相談は、5月下旬までの約3カ月間で3926件に上った。相談者は飲食業が最も多く、製造、卸・小売りと続く。

 内容別は解雇や雇い止めの関連が85件、未払い関連も32件あった。「会社から退職をほのめかされた」「退職を迫られたが納得できない」との声が集まる。広島労働局が助言した労使間の紛争も1件あった。

 広島労働弁護団で団長を務める藤井裕弁護士にも、相談が相次ぐ。飲食店で正社員として働く女性店員は店長から「今客が少ないから、仕事がない」とあいまいに言われて休業に。賃金の保障がないまま不安な日々を過ごす。経営が傾いた中小企業の従業員は社長と連絡が取れなくなった。事務所も引き払われ、失業手当を受けるための手続きもできなくなった。

 ■30日以上前に通知義務

 藤井弁護士は「新型コロナが原因で売り上げが減ったという程度では、簡単に解雇したり退職を強いたりできない」と強調する。解雇には合理的な理由が必要で、経営不振であってもその正当性は厳しく問われる。企業には、解雇を30日以上前に告げなければ従業員へ手当を払う義務もある。「倒産する場合でも、会社は手続きの時期や負債総額の説明を尽くすべきだ」と藤井弁護士は説く。

 厚生労働省によると、新型コロナの影響による解雇・雇い止めは中国地方で1090人。見込みを含め5月29日時点で集計した。(森岡恭子) 

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