地方経済

【フィーチャー】卸売市場の規制緩和、期待と懸念 改正法21日施行

2020/6/12
小イワシが初入荷した11日の広島市中央卸売市場中央市場の水産棟(西区)

小イワシが初入荷した11日の広島市中央卸売市場中央市場の水産棟(西区)

 ▽将来ビジョンどう描く

 改正卸売市場法の21日施行が近づいてきた。卸売市場に対する国の関与が極めて小さくなり、各市場が独自にルールを定めるようになる。広島市は市中央卸売市場(西区)の規制を緩和。卸と仲卸の双方が取引の幅を広げられるようになる。取扱量が減る中、競争の激化も見込まれ、業者には期待と懸念が交錯している。

 「はい、なんぼ」―。小イワシが今季、初入荷した11日。早朝の中央市場水産棟に競り人の威勢の良い声が響いた。卸売業者が桟橋で漁業者から魚を受け取り、競りや相対取引で仲卸業者に販売。仲卸が売り先の小売店や飲食店に急いだ。現行の卸売市場法に基づく光景だ。

 市は21日から運用する新ルールで、仲卸が漁業者から直接仕入れたり、卸が仲卸を通さず店へじかに売ったりする取引を認める。商品を市場に持ち込まずに流通させることも認める。現行法は原則禁じてきた。

 市は「取引の幅を狭める規制は必要ない。産地や消費者のニーズに対応できる市場を目指す」と緩和の狙いを説明する。水産卸の広島魚市場の佐々木猛社長は「インターネットなどを使って消費者に直接魚を売ることも検討したい」と新たな仕組みの中で意欲を見せる。

 卸、仲卸ともに手掛けられる業務は広がる。ただ新たに認められる業務について、市はこれまでも「例外」として認めていた。取引の形は急には変わらないという見方が市場内では大勢を占める。

 ■取扱量6割減

 市場は取扱量が減り、存在意義を問われている。市中央市場の2019年の水産取扱量はピークだった1985年から6割減った。青果は同じく02年から2割落ち込んだ。水産と青果、花を合わせた仲卸業者は昨年6月時点で44社。10年前と比べて10社減り、20年前より25社減った。

 背景には食卓の変化がある。外食や中食が広がり、市場が扱う生鮮品に代わって加工品の流通が増えた。大型スーパーには、産地と直接取引する動きが広がった。生産者側も産直市やネット販売など出荷が多彩になった。市場で品物を仕入れていた街の青果店や鮮魚店は少なくなった。

 ■「部門超え議論」

 「経営難に追い込まれる市場は増える」と佐々木社長。「水産と青果がそろうのがこの市場の強み。部門の枠を超え、生き残りに向けて議論を深めたい」と意気込む。

 業者には新ルールへの警戒もある。業務の垣根が低くなり、仕事を奪い合う懸念だ。ある仲卸業者は「産地から直接仕入れられるようにはなるが、資金的にも人手的にも新しい事業は難しい」と漏らす。

 市場の活性化は待ったなしとの認識は事業者に共通する。競争を促す新ルールの下、市場の将来のビジョンをどう描いていくか。佐々木社長は「経営環境が大きく変わる中、自由化をどう生かしていくかが問われている」と受け止める。(新本恭子)

 【記者の目】市場の意義見いだす時

 「従来のやり方では縮小していくだけ」。取材した企業の多くは、市場の現状に焦りを募らせていた。広島市中央卸売市場では、市場の施設を建て替える議論も進む。新しい法の下、新しい器で何をしていくのか。市場ならではの意義ある役割を、スピード感を持って見いだす必要がある。

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