地方経済

【日鉄呉地区 製鉄所閉鎖】就職希望の高校生が落胆 途絶える地元採用、人材流出懸念の声

2020/9/7 22:12
求人減の状況に対応策を練る呉商業高の江藤教諭(中)たち

求人減の状況に対応策を練る呉商業高の江藤教諭(中)たち

 日本製鉄(日鉄、東京)が瀬戸内製鉄所呉地区(呉市)を2023年9月末をめどに閉鎖する方針を受け、就職を希望する地元の高校生の動揺が広がっている。同社を志望していた生徒からは落胆の声が漏れ、閉鎖後の呉経済への不安から、市外の企業に注目する傾向も出てきた。市内の中小企業は若い人材の流出を懸念している。

 「ずっと地元で働ける大手の就職先がなくなって残念」。市内の高校3年男子(18)は悔しさをにじませる。スケールの大きい工場を見て憧れを抱いていたが、市外の自動車関連の会社の就職試験を受けることにした。「製鉄所が閉鎖した後の経済が不安。呉に残るより、自分が何をしたいのか考えた」と言う。

 ▽鉄鋼志望は減

 前身の日新製鋼呉製鉄所の時代は例年20〜30人の高校生の新卒を採用し、関係者によると、50人を超えた年もあった。今年は、例年なら求人のあった呉工業高や呉商業高、呉港高に対してゼロ。日鉄は同製鉄所呉地区の高炉休止のめどを来年9月末としており、現場向けの地元採用をほぼ打ち切ったとみられる。

 呉工業高は例年、関連会社を含め、就職希望者の1割に当たる10人強を送り出してきた。生徒の家族が働いていたり、地域の世話役をするOBがいたりして鉄鋼業界を希望する生徒が多かったが、今年は減少しているという。

 中本浩二校長は「保護者の安定志向が強くなり、生徒は市外の大手に目が向きがちになっている」とみる。ただ、地元企業の求人は寄せられているとし「生徒の希望を丁寧に聞き、ミスマッチを防ぐ」と強調する。

 呉と江田島市を管轄するハローワーク呉が受け付けた来春卒業の高校生の求人は、7月末時点で596人。前年同期と比べて36・7%減った。求人倍率は1・99倍で、県全体の2・60倍を下回る。コロナ禍が採用意欲を全般に低下させる中、地場の鉄鋼業や自動車関連の落ち込みが目立つという。

 ▽中小に危機感

 呉商業高は市内の企業の求人が前年より4割減った。進路指導部主事の江藤貞子教諭は「就職希望者を上回る求人は確保している」としつつ、生徒には「業界やエリアを限定せず、幅広く検討するよう指導している」と話す。ウェブ説明会を開く企業の情報などを生徒に提供している。

 市内の中小企業の経営者は人材流出に危機感を持っている。県中小企業家同友会呉支部は8月上旬、市内のホテルで高校教諭を招いた懇談会を開き、経営者が事業の状況や採用計画を紹介した。相川敏郎支部長は「採用に意欲を持ち、魅力がある会社は呉にもたくさんある。高校生に知ってほしい」と力を込める。(東谷和平)

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