地方経済

【フィーチャー】広島市中心街の循環バス共同運行が浸透 11月の新法施行で踏み込んだ連携可能に

2020/9/9
エキまちループの停留所に止まるバス(広島市中区)

エキまちループの停留所に止まるバス(広島市中区)

 ▽混雑解消、各社連携へ一石 郊外路線維持が次の課題

 広島市のバス会社が中心街で共同運行する循環線が浸透してきた。ダイヤが過密で乗客を奪い合う状況を改善したい事業者と、乗りやすい路線網を目指す市が一体となって取り組む。11月には、さらに踏み込んだ連携を可能にする新法が施行される。利用者目線の改革を続けることが重要だ。

 「百貨店やJR広島駅などよく行く場所を通るので便利が良い」。中区の福屋八丁堀本店前でバスを降りた86歳の女性が語る。利用したのは広島電鉄(広島市中区)と広島バス(同)が走らせる循環線エキまちループ。「10分置きに停留所に来るので分かりやすい。よく乗るようになった」と喜ぶ。

 ▽全国有数の過密

 一帯のバスの過密ぶりは全国有数だ。利用者は多いが各社が乗り入れ、激しい争奪戦になっている。停留所は乱立し、ダイヤも複雑に。結局、利用者に分かりにくい上、道路も混雑するようになった。

 地域の公共交通の基本方針として市がまとめた「地域公共交通網形成計画」は、都心部の過密の解消と、経営が厳しい郊外路線の確保を目指している。具体策として2018年5月、エキまちループが始まった。今年1月には、エキまちの2社に広島交通(西区)が加わってデルタ内の主要施設を巡るまちのわループがスタートした。

 広島バスは公共交通がない地域を通って広島港まで伸びる新路線の広島みなと新線も始めた。市は「新型コロナウイルスの影響で成果を測りにくい」としながらも「市民の評判は良い」とする。まちのわは10月に停留所を増やす。

 他社との関係を深めようとするのが、最大手の広電だ。大上明紀交通政策部長は2種の循環線に続く「第3弾、第4弾の再編も実現させたい」と語る。念頭に置くのが他社との一部路線の共同経営だ。独禁法が適用されないようにする11月施行の特例法が鍵を握る。今は規制されている路線やダイヤの調整が可能になる。運賃収入をいったん集めて各社に振り分けるプール精算もできるようになる。バス以外の交通事業者も枠組みに加われる。

 ▽新精算法に期待

 大上部長はプール精算を「再編の特効薬」と期待する。現在の循環線の運賃は客を乗せたバスに入る。新制度なら各社で収入を分け合える。「減便で収入が減るとなると再編に踏み込めない。プール精算なら事業者間に不公平感がなく協力しやすい」と説く。

 広電は都心部の路線とともに、過疎地の路線の維持に向けて他社と調整したい考えだ。背景には業界の苦境がある。慢性的な運転手不足に加え、新型コロナウイルスの影響で乗客が激減。広電も最も落ち込んだ5月は昨年の4割になり、現在も8割にとどまる。

 市の計画は改定の時期を迎えた。これから交通事業者や学識者、利用者代表などで次の計画を練る。梶谷直毅・公共交通計画担当課長は「共同経営は路線の在り方を考える上で一つの手法」と受け止める。

 事業者にとって路線は経営の基盤であり、大手の主導で議論が進むことに不安もあるだろう。ある社は「是々非々で検討する」とする。

 名古屋大の加藤博和教授(公共交通政策)は「利用者が減る時代。自社のことだけ考えていては、やがて公共交通の市場そのものを失う」と指摘。「事業者間で公明正大に協議できるようになるのが新制度の特徴の一つ。サービスを改善し、全体の利用を増やす発想で議論を深めてほしい」と呼び掛けている。(新本恭子)

 【記者の目】近ごろ感じる分かりやすさ

 分かりにくいと感じていた中心街のバスだが、循環線が便利で近ごろよく乗っている。中心部の均一運賃、バス会社を選ばず乗れる共通定期など便利なサービスは増えてきた。公共交通は人が乗らないとなくなる。新制度を踏まえて各社がどう動き、地域の交通網がどう変わるのか注目したい。

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