地方経済

【フィーチャー】中小旅行会社、なお窮状 GoToトラベル2カ月

2020/9/23 22:58
稼働していない大型バスが並ぶささき観光トラベルの車庫

稼働していない大型バスが並ぶささき観光トラベルの車庫

 国の観光支援事業「Go To トラベル」が始まって2カ月が過ぎた。中国地方でも旅行会社の業績を改善する効果が一定にあるものの、中小事業者への恩恵は小さい。10月には地域共通クーポン制度が始まり、東京発着の旅行も対象になる。本格化する事業に、旅行会社は期待と不安を持っている。

 ▽大手は環境改善、追加配分の具体策急務

 22日までの4連休中は全国で旅行者が多く、今年一番の来場となる観光施設も目立った。「観光シーズンの10、11月に向けて期待できる」。ささき観光(広島市佐伯区)の佐々木雅美社長は手応えを感じた。

 バスツアーを手掛ける子会社の車庫には、出番のない大型バスが4台並ぶ。4〜8月の団体客はわずか1組9人。9月は増えたとはいえ、4組75人にとどまった。光明が少しずつ見え始めた段階だ。

 ▽見通し示さぬ国

 業績を回復させようと考える時、佐々木社長には悩みがある。GoToで得られる補助の少なさだ。予算は限られている。各社には配分枠があり、昨年度の取扱額などで決まる。中小には不利といえる。同社は300万円弱。大型バスの乗客を20人に抑えた日帰りツアーを1日1回組むと、20日で使い切ってしまう。

 国は配分枠を当面の目安とし、割引総額が上回っても事業者が申請すれば増えると説明するが、現時点で追加金額の見通しは示していない。

 割引分を旅行業者がいったん立て替える仕組みも中小の負担になっている。GoTo実績を運営事務局へ報告してから入金まで1カ月かかることもある。佐々木社長は「今の配分枠では落ち込みの回復にはほど遠い。立て替え制度は運転資金を圧迫し、中小の経営は持たない」と唱える。

 ▽クーポン追い風

 GoToの恩恵を得られない中小もある。日帰りバスツアーが主力の福山市の会社は事業に参加登録しながらも、割引商品を発売していない。密集を避けて乗客を半数にすると、ツアーが赤字になるからだ。社有のバスがなく、借りる負担も大きい。担当者は「様子見を続けるしかない」とため息をつく。

 大手はどうか。ある会社の広島県内の支店は今月8日、GoTo割引のホテル宿泊やツアーに予約の電話が殺到した。きっかけは同日に発表された、旅行代金の15%に当たるクーポンの追加だ。旅先の飲食店や土産物店で使える。支店長は「お得感が増した。当初は感染を広げるとの批判もあったが、流れは完全に変わった」と言い切る。

 売り上げの多くを占めていた海外旅行が対象外のため、数カ月に及ぶ赤字を取り戻すのは難しいが、中小に比べると環境は明らかに好転している。

 赤羽一嘉国土交通相は8月11日、今後の事業予算について「中小事業者もしっかり活用できるように適切に配分したい」と述べた。1カ月が過ぎた今も、国交省は具体策を「検討中」とする。中国5県の旅行業者など515社のうち、事業に参加するのは今月17日時点で65・4%の337社。恩恵を地方の中小にまで波及させるには、いち早い実現が欠かせない。(森岡恭子)

 <クリック>Go To トラベル 新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ観光業界を振興する国の事業。期間は7月22日〜来年3月15日。関連予算は約1兆3500億円。日帰りツアーや国内宿泊代金の最大50%を支援する。当初は35%分の代金割引で始めた。10月1日からは、残る15%分の地域共通クーポンを旅行者に配り、東京発着の旅行も対象に加わる。 

 【記者の目】団体で楽しむ新たな提案を

 この4連休に広島県内の高速道路を走った。ずいぶん車は増えたが、自家用車ばかりで大型バスはほとんど見当たらなかった。団体旅行はまだ、回復に向けた最初の一歩を踏み出そうとしているところだ。厳しい状況を何とか切り抜け、感染に気を付けながら行楽を楽しむという、新たな形の旅行を味わわせてほしい。

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