地方経済
【フィーチャー】舞台なくバスガイド半減 法改正や旅行減で採用下火 かつての「花形」新たな芽吹きも
バスガイドが激減している。昨年7月の全国の人数は2918人で、記録のある2007年の半数近くになった。背景には、貸し切りバスが運転手1人で運行できるようになった規制緩和や団体旅行の減少がある。中国地方ではバス会社も採用を控え、外注が主流になった。ただ最近は、新たな需要を掘り起こす試みも生まれた。かつての「花形職業」が新たな形を模索している。
広島市中区の原爆資料館そばで12日午後、修学旅行生の案内を終えたバスガイド5人が打ち合わせをしていた。近年はバス会社による直接雇用は少なく、5人とも紹介会社のKSシステム(広島市中区)に所属。この日は広島県外のバス会社の車両に乗った。
▽紹介受けて乗務
KSシステムには約50人が所属。バスでの乗務を仲介している。ガイドは、過去にバス会社で経験を積んだ人が大半。年齢層は上がる一方で、杉野博司取締役は「今のままだとガイドの数が減るのは間違いない」と懸念する。
かつては中国地方の多くのバス会社が、毎年数十人のガイドを採用していた。紹介会社グリーンガイド(佐伯区)の福田ムツ子社長も高校を卒業した1968年、ガイドとして広島電鉄(中区)に入社した。同期は約60人。「みんなの憧れの職業。華やかな時代だった」と懐かしむ。
環境の変化は、2000年の道路運送法や運輸規則の改正がきっかけになった。貸し切りバスはガイドなどの車掌が原則乗車するルールが変わり、運転手1人での運行を可能にした。全体の運賃に含まれていたガイド料金は、切り離された。安さを求めたガイド不在の運行が増加。バス会社の採用は下火になった。
活躍の場の団体旅行も少なくなった。少子化で修学旅行生が減少。職場や町内会などの旅行も減った。00年代初めに採用をやめた広島県内のバス会社は「経費削減のためだった」と明かす。日本バス協会(東京)によると、会員企業に所属するガイドは07年7月で5354人。毎年のように減り、19年は初めて3千人を割った。
▽体験や映像企画
ただ、明るい兆しもある。定期観光バスに力を入れる企業に、独自の魅力として採用を再開する動きが出てきた。中国ジェイアールバス(南区)は16年、約10年ぶりに採用。原爆ドーム(中区)や錦帯橋(岩国市)を巡るバスで、今は2人が活躍する。一畑バス(松江市)も定期観光バスを始めた17年、数十年ぶりに正社員を雇用。旅行雑誌には載らない自社ガイドならではの案内を売り込む。
観光需要を停滞させた新型コロナウイルスの流行を受け、ガイド自身も新たな舞台を探し始めた。KSシステムに所属する仁井佐和子さん(47)は、ガイド仲間とクラウドファンディング(CF)を企画した。返礼として用意したのは、ガイド体験や出張ガイドだ。
観光地の映像を撮影し、希望の場所で上映しながら案内する「バーチャル観光バスガイド」も選べる。バス会社からの乗務要請を待つのではなく、自ら出向くガイドやバスを使わないガイドに挑む格好だ。仁井さんは意気込む。「ガイドの伝統をつないでいくため、できることに挑戦したい」(口元惇矢)
【記者の目】話術と知識魅力 動向見守りたい
軽快な語りで盛り上げ、豊富な知識にうなずかされる。そんなバスガイドの思い出を持つ人は多いだろう。華やかな一方、観光地の膨大な情報を頭に入れるなど仕事はハードだ。それでもガイドは言った。「貴重な旅を彩りたい」と。需要が細る中、その役割をどう高め、広げていくのか。期待して見守りたい。
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▽マツダの技術力評価
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